若者×和

異国人化する若者

20代前半の大学生約100名に、和ときいて思い浮かぶことをきいたところ、最も多かったのは抹茶である。抹茶は、若者にとっての和の象徴である。
その理由をきくと、お茶そのものが和であるが、なかでも、抹茶は格式高く、高級なもの。和の憧れであると話す。だからこそ、抹茶風味のお菓子などが増え、一般に売れるのだと彼らは推測する。


その他には、ごはん、和食、だんご、着物・浴衣、花柄、京都、寺、畳などがあげられた。これまで、日本人として育み、感じてきたというよりは、世間で、和や日本のものとして分類されたものが多い。


若者にとっての和は、日本を訪れる外国人むけのガイドブックやお土産物屋さんで、「日本らしさの象徴」として紹介されるものと近い。和に対する感覚や捉え方は、外国人と似ている。若者への調査結果をみて、「和がコンビニ化」していると評価した人が多かったが異国の人と思えば、理解できる。
なぜ、外国人と同じように和をとらえるのか。その背景には、洋風化した暮らしが、すでに「当たり前の時代」に生まれたことが大きい。和は、和風家具・インテリア、和風ハンバーグいったように洋をベースとしたライフスタイルのなかに組み入れられていた。そのため、若者にとって、和は、和を嗜好する一部の人、もしくは、郊外や地方に住む人が守るものと、イベント的な存在となった。


和は昂揚感の源泉~癒しから刺激へ
お花見の頃、上野公園には、日本を訪れた中国人の女の子たちが、サングラスに派手な浴衣、そしてスニーカーという派手なスタイルで楽しそうに歩いていた。日本の女の子たちも、ぐでだまのバックに黒いスニーカー、花柄の着物、その他にも、ネコ柄の帯をしてお花見をする。組み合わせ方、楽しみ方は自由だ。靴に着物という組み合わせでも臆してはいない。京都や浅草でも、外国人だけでなくレンタル着物を借りて、街を散策する若い日本人女性は増えている。和のカテゴリーのなかでも着物など、現代の生活では非日常になっているものに、若者はワクワクする。


これまで、畳や木、障子、ふすまなどに代表されるように、和には、自然を感じさせる、心を落ち着かせる効果があるといわれた。しかしながら、いまの若者には、癒しというよりも、アクセント・スパイスとして昂揚感をうみだす。
増え続ける訪日外国人によって、日本らしさや和をうたう商品やサービスは増えている。同時に、日本の若者が和に触れる機会、その新しさ、ワクワク感に消費する機会も増えているといえよう。


一体化・一体感にひかれる若者
夏になると、花火に、お祭りにと浴衣を着る人が増えている。多少窮屈でも我慢できるのは、和のイベントを、出来るだけ昔の形のまま演じ、一体化することに、気持ちが高ぶるからだろう。京都や浅草で着物で歩くときにも同様の感覚が存在する。近年、若者を中心に定着しつつあるハロウィンイベントもそのひとつだ。手帖にもハロウィンの日が記載されることも増えた。ハロウィンは、東京ディズニーランドのハロウィンイベントから火が付き、原宿、川崎でのイベントに拡大。コスプレはハロウィン人気推進の大きな要素である。各企業も関連商品を販売したことで、飛躍的にハロウィンイベントの認知度があがり、急激に人口が増えている。


現在、不景気が常態化している時代に生まれ育った若者にとって、仕事に就くことは重大であり、だからこそ就活は人生の一大事である。準備を怠ったりはしない。ほぼ同じ服装で、同じ見た目で、就職活動に臨む。真冬に会社説明会が開催されていた頃、学生に「風邪予防のためにもタイツをはいたほうがよいのでは」と提案したところ、「そんなことをしたら落ちる、許されない」と真顔で話していた。はみ出した服装を決してしないのは、不利益はこうむりたくないという強い恐怖感と、服装で一体化すること自体が、ある種のコスプレであり、昂揚感を得ているからではないか。また、無駄が嫌いな若者は自分たちで商品やサービスをカスタマイズする等、工夫を楽しむ世代というよりもむしろ、できあがった何かに一体化することは安心であり、楽なのだろう。


和との関係からみる若者へのアプローチ
彼らは経験が少ない。
そのため、訪日外国人と同様のニーズがあると考えることも、若者市場をとらえるヒントになるだ。また、一体化や一体感を求める背景に経験の少なさの他、広く浅い人間関係など、世界の狭さからくる自信のなさがある。若者にとって刺激と安心感の両立が大切なのだ。


消費意欲の低さなど、既に語りつくされている感のある20代を中心とする現代の若者たちであるが、新たなアプローチを考えるのならば、彼らよりも、上の年代ではなく、近い年代の人に任せるのもひとつの選択肢だろう。

 

中塚  千恵  (なかつか  ちえ)
法政大学 非常勤講師
法政大学大学院経営学研究科修了。経営学修士(MBA)

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