Y!アカデミアはリーダーのベースキャンプ

Y!アカデミア(ヤフー・アカデミア)は、ヤフーグループの次世代リーダー開発を行う企業内大学です。現在、ヤフーおよびグループ会社の社員400名が在籍し、自分らしいリーダーシップが発揮できるよう、スキルとマインドを鍛えながら切磋琢磨しています。

クラス構成は2種類、希望すれば入れる一般クラスに300名、選考面談により選ばれた選抜クラスに100名が在籍しています。一般クラスで1年間学んだ後、希望者が選考を経て、合格したら1年間の選抜クラスに進みます。選抜クラスは、更に職位(本部長/部長/リーダー/メンバーの各クラス)、目的別(CFOクラス)の5クラスに分かれており、各クラスには執行役員が塾頭(メンター)となり、受講生の成長を見守っています。


ヤフーは、1996年4月にサービスを開始し、今年で20年を迎えます。現在では100以上のサービスを提供し、従業員数は5,500名の大きな企業となりました。2012年に社長をはじめとする経営陣が交代してからは、従業員ひとりひとりの力を最大限に引き出すことが重要と考え、「従業員の才能と情熱を解き放つ」というコンセプトのもと、人財育成に力を入れています。大企業となったヤフーが、引き続き強い企業であり続けるには、新しいことにも果敢にチャレンジし、モチベーション高くチームを率いていくリーダーシップを持ったリーダーが必要だ、という社長の宮坂の強い意向に基づき、2014年5月に選抜クラス81名にて開校しました。


初年度は、企業内大学という初めての試みに、校長の宮坂や塾頭の執行役員、事務局で苦労しながら、手探りでカリキュラムを作り提供してきましたが、1年間である程度のかたちが見え、より多くの社員向けにコンテンツを提供したい、という思いから、2015年途中より、選抜クラス100名に加え、全社員を対象とした一般クラス(100名)を新たに設定、2016年は選抜クラス100名、一般クラス300名の400名体制と、1年ごとに大幅に拡充しています。


人を動かすリーダーに求められる資質を育む
Y!アカデミアでは、人を動かすリーダーになるために、まずは自分をリードすることが大事だ、ということで、(1)リーダーシップ講演、(2)スキル・マインドトレーニング、(3)ケースを用いた経営トレーニング、の3種類のコンテンツを提供しています。選抜クラスは年に数回ずつ合宿を行い、寝食をともにしながら学びます。


(1)リーダーシップ講演は、全クラス合同で実施します。2015年は、ソフィアバンク代表田坂広志氏、ラクスル社長松本恭攝氏、元武雄市長樋渡啓祐氏、ラグビーU-20日本代表中竹竜二氏を招き、講演を行いました。受講生の気づきを最大化するために、事前に講演者より指定された本を読み、小グループの読書会で意見交換をしたうえで講演に臨み、そして講演後は必ず振り返りを行い、自分に引き寄せて学びや気づきを得る工夫をしています。


(2)のスキル・マインドトレーニングでは、まずスキル系は、論理思考/問題解決/システム思考/戦略思考などの思考トレーニングを、そしてマインド系は、インナーワーク(内省)/プレゼンテーション/塾頭メンタリングを提供しています(プレゼンは表現を通し自分の生き様や仕事觀を見つめる目的で、マインド系と位置づけています)。


そして(3)ケースを用いた経営トレーニングで、意思決定の疑似体験を行います。ヤフーやグループ会社で発生した様々な事象で、リーダーが何を考えどう乗り越えたか、を記したケースを執筆し、受講者はそのケースを読み、自分ならその状況でどう行動するか意思決定し、ディスカッションします。題材は、EC革命、グループ会社経営再建、企業買収プロジェクトなど、多岐にわたります。実際にケースの主人公が登壇し、受講生のプレゼンを聞いた上で実体験を解説するので、受講生にとっては、彼我の差を感じ、自分のどこを鍛えたらよいか気づきや学びを得る場となります。


Y!アカデミアでは、このように様々なプログラムをおこなっているものの、研修だけで受講生を成長させよう、とは考えていません。何かを学び成長するのは、実際に業務にチャレンジする職場においてであり、Y!アカデミアは、成長のためのヒントをカリキュラムを通じて提供し、受講生たちが気づきを得る場、と位置づけています。通常の研修であるような、業務にすぐ役立つ知識をインプットするものはなく、受講生が思考の癖や思い込みを修正し、「俯瞰してものごとを捉えながら、自分の価値観に基づき、自らをリードできるようになる」ことで、未知なる状況にあたった時や、困難にぶつかった時でも、空回りせず、ぶれずに目的に立ち向かい、チームを成果に導く真のリーダーシップが発揮できるようになる、と考えています。


そのため、コンテンツの実施都度、受講後のアンケートで、文章でしっかり振り返りを行うように促しています。やってみて振り返り、気づき、自分のものにして実務に活かす、という成長のサイクルを習慣化することを目指しているのです。


Y!アカデミア自体も、体制や内容がどんどん進化しています。校長の宮坂、各クラス塾頭である執行役員と事務局が集まり、毎月会議を行い、受講生に対し経営陣からの思いをしっかり届けるために、ケースとして取り上げるべきテーマや塾頭が果たすべき役割など、様々な議題を話し合いながら改善しています。塾頭は執行役員が持ち回りで担当し、また他の執行役員はケースの主人公として登壇する場合もあり、経営陣全体でこのY!アカデミアにコミットして、次世代リーダーの発掘と育成を行っています。


企業内大学の評価は、卒業生の活躍によってのみ評価されます。Y!アカデミアは、まだ3年目と歴史は浅いですが、卒業生が執行役員になったり部長から本部長になったりと、職位があがったケースが生まれ始めています。また、プログラムは受講生からは極めて好評で、「リーダーシップを発揮するために何をどうやって鍛えていけばよいか、Y!アカデミアで初めてわかった」「リーダーとして、スキルだけでなく、自分の価値観を見つめる、というマインド面での鍛錬が必要だとわかった」「知識を習得すること以上に、俯瞰してものごとを捉え考える力が重要だということがわかった」という気づきを多くの受講生が得ています。加えて、受講生同士で組織を越えた横のつながりが生まれることも、メリットに挙げる受講生も多いです。「同じ釜の飯を食った仲間なので、何か困った時にはすぐ聞ける」といったつながりができ、Y!アカデミアで生まれた関係から業務上のコラボにつながっているケースも生まれてきています。


今後は、Y!アカデミアで学んだ社員たちがリーダーシップを発揮し、各所でヤフーグループの経営の屋台骨を支えるようになることを目指しています。その先には、ヤフーグループの目指すべきリーダーシップ像が受講生を通じてグループ全体に共有されることで、Y!アカデミアでの学びを浸透させていきたいと考えています。Y!アカデミアは、ヤフーグループの「リーダーのベースキャンプ」となっていくことを目指し、日々進化させていきます。

 
伊藤  羊一  (いとう  よういち)
ヤフー株式会社  コーポレート統括本部  Y!アカデミア本部長
1990年日本興業銀行入社、営業、事業再生などを担当。2003年プラス株式会社に入社し、物流、マーケティング、新規事業開発、経営に従事。2015年4月にヤフー株式会社に入社し、ヤフーグループの次世代リーダー開発を行うY!アカデミアの立ち上げを行い責任者を勤める。2013年4月より、グロービス経営大学院にて客員教授も勤める。

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