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DMA年次大会にみるマーケティングの方向性

設立から99年を迎えたダイレクトマーケティング協会(DMA)が「データ&マーケティング協会(Data & Marketing Association)」と名称を変更することとなった。

データベース、データドリブン、データアナリティクス等データはマーケティングには必須となったが、同時にどのようなデータをどのように使うのか、生活者からするとどのように使われるのかが一番気になるところ。
そのデータ保護についてもDMA は同時に法整備を進めてきている。
今後もDMAのワシントンオフィスを中心に、ロビー活動(advocate)が行われ、革新(innovate)、教育(educate)、人とのつながり(connect)という4つの軸が新DMAの活動の中心となる。


今年のDMA国際エコー賞では、ニュージーランドのColenso BBDOがグランプリ(ダイヤモンド賞)を受賞した。従来の業種別によるエントリーからカテゴリーの枠が増え、より専門的なスキルを競合させることにもなった。しかし、これがダイレクトレスポンスにおいて87年の歴史を有するエコー賞の最終形ではなく、マーケティングコミュニケーションのトレンドに合わせたものであろう。ITの進化とそれに伴う生活者向けの便利なツールが幅広く普及したことにより、タッチポイントが増え、情報を取捨選択する賢い生活者に追いつくために、マーケターがいかに先回りをして、生活者あるいはターゲットとしている見込み顧客、顧客等のビヘイビアーに変化を与えることができるのかが今日のマーケターに求められていることである。マーケター=ビヘイビアリストと呼んでも良い。


今年の特徴の一つとしてエモーショナルコネクションの効果が話題になっていた。
提供するコンテンツとブランドとの関連性がターゲットに伝わらなくてはいけない。
そして、それがどのようにターゲットの行動に変化を与えるのか。
ここ数年は動画を用いたエモーションへの訴求が増えてきている。普段から目にすることが多くなった動画であるが、どこまで感情的なつながりを生み出し、行動に直結させることができるのか。それがマーケティング施策において評価されるところである。
レスポンス=コンバージョンではないため、最終的なマーケティングゴールがどこにあるのかは、事前に測定基準として定めるべきであり、単に面白いという内容ではなく、なぜそのようなクリエイティブが自社ブランドと関連性があるのかがターゲットに伝わることが必要であろう。


デジタルの分野だけが伸びていて、従来のDMやカタログ、コールセンターが収縮しているのであろうか? 決してそうではない。
こちらのグラフにあるとおり、アメリカでは郵便通数自体は大きく落ち込んでいる。これは従来の小切手による支払いが銀行の自動引き落としに徐々に変わり、万人向けのお知らせのような郵便がeメールに替わっていることにもよる。しかし、郵便料金は大きく伸びを見せていることに驚かされる。実は、カタログが大きく貢献していることがウインターベリーグループの調査で明らかにされている。
また、データドリブンマーケティングはもはや説明する必要がないほどに当たり前になっているが、オンライン系のツールへの予算配分が前年比において伸びを見せていることが分かるが、予算比率でみるとDM、コールセンターという従来のマーケティング手法への配分が高いことが分かる。
1917年に誕生したDMA。来年は記念すべき100周年を迎えるが、10月8日~11日 ルイジアナ州ニューオーリンズで開催予定だ。
CEOのトム・ベントン氏は「生活者に最も関連性が高いコンテンツを適時に伝えることが時代を超越したマーケティングであり、それこそがダイレクトマーケティングである、と表現してきた。つまり、データをマーケティングに用いることで、事実と成果に基づく長期的関係構築をなし、それによって信頼を培うことこそがいつの時代であっても顧客満足の公式であり、マーケティングの成功と言える。」と語った。


GEの副会長であるベス・コムストック女史は基調講演で、「デジタルテクノロジーの分野には、もっとマーケティングに活用できる分野があるはず。現段階では13%ほどしか活用されていない。つまり87%も使うことができる領域=機会が残されている。」ということを語っていた。しかし、テクノロジーが中心ではなく、あくまでも人が中心であることを忘れてはいけない。
テクノロジーに精通していることは大切ではあるが、生活者とのタッチポイントとなる複数のチャネルを通じて何をすることが顧客満足につながるマーケティング活動であるのかをしっかりと考える必要がでてくる。メディアやツールの紹介といったレベルでマーケターが生計を立ててはいかれない。


マーケター育成の必要性についても語られていた。冒頭に書いた通り、「教育」はDMAにとって今後の4つの軸の1つでもある。
DMAは全米で3,000人ものマーケターが学んでいる育成プログラムを提供している。今回も各セミナールームはほぼ満席で、40か国からの参加者が熱心に受講をしていた。ここで実施されたような科目がいよいよ日本語でもオンラインで受講が可能となる。今必要とされているマーケティングの必須項目を何度も繰り返し学ぶことができるプログラムが「DMA公認ファンダメンタルマーケター(DCFM)」である。https://dcfm.fusion.co.jp/


このプログラムはフュージョン株式会社とDMAが共同で開発し、世界で初めて日本語化され、国内では11月21日から受講が可能となる。
今後、日本マーケティング協会と協力しDCFMを知っていただくためのセミナーも検討中である。また、2017年2月には、講師の一人でもあるロン・ジェイコブス氏(『ザ・マーケティング』の著者)がDCFMのプロモーションを兼ねて来日を予定している。


最後に、今年の基調講演、各セッションにおいて共通に語られていたことは、データの重要性である。つまりデータを用いて、適切なターゲットに対して、最も関心が高いコンテンツを、最適なタイミングで届けること。決してテクノロジーを使いこなすことでもなく、コミュニケーションのチャネルを絞ることでもない。
この原則はダイレクトマーケティングという言葉が最初に使われた頃から常に変わることがないキーメッセージである。


【お問い合わせ先】
フュージョン株式会社 
谷田貝  正人 (やたがい   まさと)
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