このページを印刷

琉神マブヤーにおける三世代交流

マブヤー&ガナシー マブヤー&ガナシー 株式会社カレッジフォ-ス

琉神マブヤーとは?
まず琉神マブヤーについて説明させていただくと、2008年10月~12月を皮切りに沖縄の地上波で放映された、沖縄の地域戦隊ヒーローであり現在10年継続しているコンテンツです。

沖縄では認知率が80%を超えるとされており現在でもショッピングセンターなどのイベント会場で1,000人程度のお客様が集まるキャラクターショーを継続させていただいています。また、テレビでの放映は、現在時点で7作、その他、映画1作、フラッシュアニメ、ノベル等でも扱われています。

 

私はもともと沖縄のお土産品の卸問屋の経営者で、様々な企画をしていたのですが、琉神マブヤーが、初めてメディア戦略を仕掛けるコンテンツ企画になりました。

 

当然、初めての試みなので、分からないこと尽くしのスタートになりましたが、熱意さえあれば、多くの協力者や、必要な人材が集まるもので、2007年10月に企画の構想をはじめ、2008年2月にプロジェクトチームを立ち上げた後、同年10月に番組の放映が始まりました。様々な方々にご参加いただくことで、企画の掘り込みが徐々に深くなり、スタート時点でコンセプトが一気に固まっていきました。


沖縄の地域戦隊ヒーローであることから、その土地の豊かさと活力を生み出す必要がありますが、そのためには、その土地の文化を育み、継承することが重要です。

 

本土と異なった歴史を歩んだ沖縄は、幸いにも日本文化を相対化するほどの独立性の高い文化を誇ってきましたが、近年全国的な価値観の画一化が進み、沖縄においても固有の文化や歴史の継承が困難になりつつある現状がありました。この様な状況に歯止めをかけるためには、次世代の子供たちに沖縄の文化や歴史を平易に理解してもらい、子供たちに親しまれ認知されるキャラクターが必要でした。

 

琉神マブヤーが活躍する物語に、沖縄独自の文化・歴史を盛り込むことで、子供たちや大人にも沖縄の原風景やルーツというメッセージを送り続けたいという強い思いが、琉神マブヤーの骨格となったのです。ここから、沖縄という非常に狭いエリアで、零細企業が仕掛けているからこそできる、コアなターゲットに納得していただくための仕掛けづくりが始まりました。


三世代を巻き込む仕掛け作り
日本の多くのエリアと同じく、沖縄でも方言がかなりすたれています。これは、日本復帰の時代に方言札という非常に問題の多いシステムが実施され、学校で方言の使用があたかも罪悪かの様な教育がされたことがあり、方言がほぼ抹殺された時代がありました。その影響が今の世代で方言が理解できない親、子供を生み出す一因になっていると思います。


さて、先程のコンセプトを進めていく中で、当然、子供番組なので
・方言を理解できる子供がどの程度いるのか?
・子供に受け入れて貰えるのか?


という不安はあったのですが、あえて方言を使うことで世代間の交流が生まれました。子供は、方言を当然理解できませんから、親に問いかけます。しかし親も方言を理解できないので、質問に答えることが出来ません。そこで、子供たちは、御祖父さん御祖母さんに尋ねることになります。

 

御祖父さん、御祖母さんにすると、なぜこの様な質問を孫がしてくるかを疑問に感じ、答えられないと恥ずかしいので、子供と一緒に番組を見ていただけるというループが生まれました。また沖縄の文化・歴史を盛り込むことで、子供とともに親の世代も沖縄に対する興味を持つという好循環が生まれ、三世代交流が生まれたのです。


沖縄というエリアは、狭いのですが多くの固有言語を持っており、いわゆる方言のベースとなるものが幾つかあります。様々な方々からのご指導もあるのですが、琉神マブヤーでは、沖縄標準語ともいえる舞台言葉をベースに、現在使われている方言に近い言葉遣いを取り入れています。幸い沖縄には、組踊や、琉球舞踊、空手等々多くの伝統的文化が残っており、目指すべきお手本が現存しています。

 

もちろん方言に拘ることによる問題はあるのですが、それ以上に、子供たちが沖縄に興味を持ってもらう為の最初の仕掛けの成果として、方言としては死語となっていた言葉の復活や、ヒーローの真似をすることで、指笛の吹ける子供たちが増えていることは、企画者として非常に嬉しい誤算の一つになっています。

 

ヒーロービジネスの可能性
(沖縄からアジアへの展開)
たかが地域戦隊ものではありますが、ヒーロービジネスは多くの拡張性を持ち、同時に多くのゴール設定が可能です。しかしながら、沖縄の地域性を無視して、日本型の勧善懲悪に持っていくと違和感が出てきます。

 

それは歴史的に、日本があり、薩摩藩があり、中国があり、アメリカがある中で翻弄されてきた沖縄の赦しの文化の否定に繋がることが最大の理由です。この弱者の論理にも思える文化は、外敵によって翻弄される琉球時代からの沖縄の知恵であり、現在も黄金言葉として継承されています。従って琉神マブヤーは、沖縄型の勧善懲悪という事を意識することになります。強者の論理で、戦い(争い)を起こすことが出来ないからこそ、相手を理解して落としどころを模索する、赦しの文化が存在するのです。また、沖縄では、自然と共生する事も当然の事として理解されていました。

 

今後の日本を考える時、世界の流れを考えてみても、今までの様な日本型の論理では多くの問題が起こってくる可能性が高いですし、日本を理解していただく努力を継続していく必要性があると考えています。そんな中、2年ほど前から、東北大震災の時に立ち上げた「ミライガー」という企画に参加させていただき、タイのローカルヒーロー(ミライガーT1)を作ろうという企画を進めています。

 

一年目は、現地の地上波チャンネルで放送していただいたのですが、タイ国王の崩御もという悲しい事件もありプロモーションとしては、不完全なまま、成功したと言える状況ではありませんでした。

 

しかし、今年2月に海外事業に特化したカレッジフォースという会社を沖縄で立ち上げ、沖縄県のご協力もいただきながら、タイの子供たちのためにタイのヒーローを誕生させ、育てていくというプロジェクトを進めています。

 

今年の11月からタイで放送される予定の第2シーズンでは、修行のため沖縄に来て琉神マブヤーとともに育っていく、タイのヒーロー像を模索しています。沖縄における琉神マブヤーの様に、当然タイのヒーロー像は、タイの文化に根差し、タイの子供たちに応援されるような、タイの人々に違和感を抱かせないコンセプトと方向性が必要になります。今は、それが何なのかを、タイの制作スタッフとともに、一生懸命探っている状況です。

 

最後に琉神マブヤーの1作目の放送の際に使用したキーワードを列記します。

1. うちなーぐち : 言葉は心で出来ている。
2. 石敢當 : 魔除け  沖縄の平和を願う心
3. テーゲー : 程々  足るを知る心
4. エイサー : 祖霊供養の踊り  先祖を敬う心
5. チャーガンジュウ : 健康  衣食同源  自然や食物に対する感謝
6. イチャリバチョーデー : 寛容な精神性  ホスピタリティ
7. トートーメー : 仏壇  先祖を敬う心、恐れを抱く心
8. ヌチドゥタカラ : 平和主義  命こそが最も大切である
9. カチャーシー : 祝いの踊り  出会って混ざり合う寛容の心

琉神マブヤーの故郷、沖縄にメンソーレ(いらっしゃいませ)!

 

畠中  敏成   (はたなか  としなり)
株式会社カレッジフォ-ス 代表取締役会長(CEO)、株式会社南西産業 前代表取締役社長
「琉神マブヤー」を誕生させ、2008 年TV 放送開始。その後、関連のTVシリーズをプロデュース。2011 年に映画 『琉神マブヤーTHEMOVIE 七つのマブイ』をEPとして全国公開。2014 年、「琉神マブヤー」のイスラム・マレーシア版『琉神ジュワラー』を現地製作会社DOUBLE VISIONと共同製作し、 MEDIA PRIMA 系列(地上波)にて放送。子供向けドラマ・アニメカテゴリーで、第1 位の高視聴率を獲得。

このアイテムを評価
(0 件の投票)
コメントするにはログインしてください。

関連アイテム