【次世代経営者の人材要件とは】次世代経営者育成のための修羅場体験

日本経済は長きにわたるデフレで「失われた20年」と言われ停滞が続いています。

しかし、こうした膠着した経済環境から脱却し、これからの外部環境変化に適応できる経営へと舵を切りアクセルを踏み込む時期に来ています。こうした重要な局面を託される次世代の経営層は企業の中で育っているのでしょうか。


これまでの経営が内向きであったのに対して、今後は環境変化に適応し外に向けた攻めの取り組みが望まれます。そのためには次世代経営者となるべく人材要件として、次の6つの資質が求められています。


1)創造力
これまでの自社の習慣や業界の常識にとらわれているのでは、先細りになることは明確。例えばこれまで国内家電は日本メーカーの独壇場でしたが、扇風機や掃除機はダイソンやiRobot(ルンバ)、レイコップに、調理家電ではフィリップス(ノンフライヤー)など次々と海外メーカーがユニークな商品で日本メーカーの牙城を崩し始めています。


2)決断力
以前より諸外国から日本は意思決定が遅いと言われてきました。これからのグローバルビジネスではもちろんのこと、国内マーケットで勝ち残るためにも経営者の強いトップダウンの決断力が求められます。


3)人間力
社内重要ポストを歴任することに加え、これからは卓越したコミュニケーションスキルが必須。異質の文化に対する理解と、様々な価値観を持つ相手との粘り強い交渉力。こうした柔軟な受容性と適応力を持つ人間力が求められます。


4)マーケットの先見予測力
One to Oneマーケティングの時代、マーケットは細分化されており、様々なマーケットを観察する好奇心や観察力、先見予測力がブルーオーシャンを発見することにもつながります。


5)グローバルビジネスへの適応力
最近では社内の公用語を英語にする会社が出始めています。国内需要が頭打ちする中で、海外市場に目を向けその可能性を探るのは次期経営者の役目です。社内の人材登用も、少子化の流れから海外の人材の受け入れも既に直近の課題です。


6)社内事業の再構築力
経営革新を行うときに大ナタを振らなければならないのが、社内事業の再構築です。不採算部門の整理や統合、事業拡大に伴うM&Aなど社内の伝統や先例にとらわれない事業の再構築力が必要です。


こうした資質とは、ビジネススキルとはやや異なり、その人が持っている価値観や観念に関わるものが多いため、OJTやOFF-JTの教育体系で賄うことは難しいと思われます。


そこでこうした自社の風土や習慣の枠から離れて実施される、異業種経営者研修への参加が教育効果として大きく期待できます。では社内の常識の枠を超え、イノベーションマインドや行動力に役立つ他流試合による異業種交流研修とはどのようなものなのでしょうか。


<研修の特徴>
・社内ではなくアウェイの環境で、他社の経営者から仕事の進め方や考え方などの刺激を受け、新しい視点を養うことができる。
・研修におけるディスカッションや演習課題の取り組みを通し互いに切磋琢磨することで、問題解決の仕方、プレゼンテーション、事業戦略の構築に新たな切り口やヒントを得る。
・研修を通じ経営者の人脈が構築される。


<研修内容>
研修内容は実施する教育団体によってさまざまだが、おおよそ次のようなテーマで講師による解説と参加者同士のディスカッション、分析検討演習などが実施される。
・現在の経営環境、グローバルビジネスの分析
・マーケティング事例研究
・イノベーション戦略
・海外事業戦略
・社内マネジメント など


こうした異業種混合の研修は若手から経営者向けまで様々な階層でプログラムが用意されていますが、経営層向けでは1つのテーマが2~3日の研修で行われ、全カリキュラムが終了するまで数ヶ月から1年という長いスパンで実施されるケースもあります。


研修と研修の合間にもレポートや職場実践などの課題があり、参加者はそれぞれ会社の代表でもあるため他社経営者の手前、手を抜くことが許されない、まさに修羅場の体験となることがひとつのポイントです。


こうした体験を乗り越えることでマインドの変革や参加者同士の強い人脈構築も出来るという効果を得られるのです。いずれにしても期待効果が大きい反面、研修時間と参加費用も大きいため、受講経験が社内で実践できる環境作りが整っていることや、研修のコンテンツが新しく、自社の方向性と合っていることなど、参加前の確認も必要でしょう。


以前バブルのころ、こうした研修に「タウンウォッチング」という街に出て、トレンドやマーケットの動きを肌で体験するというものが行われていました。


私はこの修羅場に、そうした体験型マーケット分析があってもよいのではと思います。例えばクールジャパンといわれるアニメやアイドル産業の視察や体験をAKBの握手会に行って、お酒や車を所有しなくなった若者がどこで何に消費をしているのか実態を見てみるのも面白いでしょう。


また政府が観光立国を目指している中で、海外から見た日本の観光産業を分析したり、あと2年後となった東京オリンピックにおける周辺産業のビジネス分析など、他流試合における今後の日本を占う演習素材には事欠かない時代になってきただけに、修羅場体験を通じて時代のニーズも掴んで欲しいものです。




村山  哲治  (むらやま  てつじ)
東京ドアーズ/人間力教育センター代表
人材教育会社で営業マンを経験したのち、教育コンサルタントとして独立。1998年社員教育とWeb制作・コンサルティングを行う東京ドアーズを設立し、大手企業をはじめ有名ECサイトの構築を行いWebコンサルタントとして全国で講演活動も行う。

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