中国のヒットコンテンツ事情

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2018年7月号『創る中国:文化・エンタテインメント編』に記載された内容です。)

90年代は日本のACGコンテンツ(アニメ、コミック、GAME等)が、雑誌や一部のTV放送で中国の若者に浸透し始めましたが、その後紙媒体がダメになり、Web媒体が台頭して状況が変わりました。

北(北京)は情報が進み、南(上海、深圳)は漫画が主流になっていき、その流れから北は動画やGAMEが主流になり、南は漫画文化やオリジナルの制作が多くなってきました。


創る中国の台頭の理由は、第1にコストの問題です。昔はそんなに海外コンテンツ(特に日本コンテンツ)の調達にコストがかからずコントロールが可能な状態でしたが、現在はコンテンツが非常に高騰しているので、買うよりも創る方がいいということです。


第2は、買う場合は放送権しか手に入らないわけですが、版権の権利を持つことができると、それをGAMEや他の収益機会が得られるので創るということです。


第3に、現在、中国のネット環境は進化が速く、ヒットするものもどんどん変わっていくことや、ヒット要因が海外のコンテンツである必要がなくなり、そんなにハイレベルでなくとも自分たちで中国人のニーズに合わせたものを作った方がヒット確率が高くなるという背景があります。


ITテクノロジーの進化によって、コンテンツの制作システムを改善したいと思っています。特に制作期間を短くすることは非常に重要で、視聴者のニーズに即対応できることが重要なのです。


昔は日本のアニメは人気でしたが、現在では、TV放送がなかった時代があったことから日本のアニメには興味がない人も多く、中国のネット小説や中国特有の漫画などを原作にして動画を制作することの方がヒットの可能性が高いです。


現在、中国で制作されているコンテンツは大きく三つのビジネスモデルに分別できると思います。一つは、独立系の制作会社が制作し、それをネットで配信するパターンで、これには投資会社がIPに対して投資するスキームです。


二つ目は、巨大動画プラットホームIQIYIのように、プラットホーム自体が自社の会員数を増やすために、自社で動画を制作するパターンで、ビジネスモデルとしては米のネットフリックスと近いと思います。


三つ目は、若い人を多く集めているテンセントのやり方で、小説、ドラマやGAMEなどどんどん新しいコンテンツを中国で創られる新しいIPにより制作して、ユーザーをコントロールするやり方です。


いずれにしてもそれぞれの巨大プラットフォ-マーは、自社の会員獲得のためにしのぎを削っている状況で、自社の会員に対してのサービスとしてコンテンツのラインナップをそろえるという考え方が強いです。


現在は、e-sportsをテーマにした「マスターオブスキル」のように、GAMEとリンクするコンテンツがウケていて、ネット小説もたくさんあり、アニメでもウケています。


中国のコンテンツ産業は、ネットの発展がとても大きなインパクトになっています。第1に、中国は非常に大きな市場ですが、ネットなら同時に問題なく配信できます。昔は都市から田舎に情報を伝達させるには2年ぐらいかかったと思いますが、現在では、ネットの発達によって、情報が3ヵ月ぐらいで人口の多い中国全土の農村まで広がります。


そんな背景もあり、ネット・コンテンツの人気は都会というよりも農村の方によることが多く、それがランキングなどにも表れるため、ネットの発達により田舎者がコンテンツの価値を決めるということになります。ユーザー数が多いのは、深圳です。工場が多く、ある意味移民都市であり、田舎から出てきた彼らの娯楽がほぼ動画サイトになっています。


現在、多くの動画サイトは単独では巨大な赤字企業です。そんな赤字事業を会員獲得のために親会社である巨大IT企業が支えているといっても過言ではありません。


これからの日本の可能性としては、「スラムダンク」や「聖闘士星矢」等昔流行った日本の有名なIPのリメイクが30代~40代をターゲットにして可能性があります。第2は、新しいIPの共同開発を行い、海外に(例えばアメリカ)売ること。第3は、中国がIPと制作費を出して、アニメ工場として外注先となることです。


アニメ好きのコアファンはざっと2,500万人ぐらいでしょうか。その中でも日本のアニメファンは400万人ぐらいだと思います。ネットユーザー6億人から考えるとほんの少しということになります。したがって、動画プラットホームとしては、中国全土に対して訴求可能なコンテンツを展開することになります。




(匿名)
中国動画プラットホーム会社  アニメ・コンテンツ責任者

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