多様性を強みにしたマネジメントと変化への挑戦

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2021年2月号『多様なASEANか、閉じたASEANか』に記載された内容です。)


1.海外駐在員として


 

私の海外駐在は2018年2月、タイのバンコクが始まりだった。25年以上日本の営業畑で勤務してきたが、シンガポール現法のタイオフィスの責任者として初の海外駐在員となり、日本とは違う文化やビジネススタイルに日々奔走した。当初一番の壁は言葉であったが、未熟な英語を駆使しながらでも、コミュニケーションを全力で試みローカルスタッフと代理店との関係構築をつくることを目標とし、出来る限り自分から心を開き信頼し活動してきた。

もちろんそれは簡単なことではなく、思うようなマネジメントやチームづくりが出来たとはいえないが、その中でも一番感じた事は、国籍、言葉、文化は違っても、結局人は心で動くということだった。それは、日本人ではなくても、我々の会社の理念や企業文化に共感をし、共にチームでゴールを目指す事が出来るという、私の中での嬉しい答えであった。

その後2019年10月にシンガポールに異動し現在に至る。タイだけではなく、各国のオフィスや販社を見る事になったがやはりその感覚は間違いなく、多国籍メンバーでも、日系企業であろうが、同じゴールやあるべき姿を共に目指す事が出来ると確信した。その中で組織を強化させ、最適化し、更にはローカライズさせていく為にはどうすべきかと日々答えを模索し続けている。

 


2.COVID-19がもたらしたもの


 

誰もが予想もしなかった2020年の環境変化に、我々はまさに翻弄された。COVID-19は東南アジア、オセアニア諸国にロックダウンを引き起こし、タイ、マレーシア、インドネシアでは未だにいつ解除になるか全く見えない状況下である。昨年はOvercome together!を合言葉に経験した事の無い状況に、Webをフルに活用し各国社員と繋ぎ励ましあい、皆でアイデアを出しながらこの環境変化に挑戦してきた。

毎週の様に各国にフライトし、社員とミーティングをしたり顧客訪問をしていた一昨年までの生活は完全に一変。出張や移動に取られる時間はなくなり社員のテレワークも既に日常になった。当初社員が会社に出社出来ない事には非常に不安を感じたが、KPIや取り組みを明確にしておく事で色々考えながら行動しており、マネジメント次第では各自の自立を促す効果もある事に気付いた。

またこの1年で社内イベントやミーティングのスタイルはすっかり変わっている。例えば朝礼は各国スタッフ全員がWeb上で顔を合わせ、各言語で挨拶を交わし朝礼当番が写真や動画をシェアしながらトピックスを共有している。また必要な時に必要なメンバーで即ミーティングも実施する。

他には、例年行われていた各国代理店が一堂に介する代理店カンファレンスも、アイデアを駆使し約130名参加のWeb開催により目的を果たせた。Face to Faceが理想ではあるが、今のスタイルでも実際には以前に比べスタッフ間の距離感は以前より縮まり、意思決定も迅速に出来るようになった。

昨年12月、全社員との個人面談をじっくりと行った。その中でCOVID-19はあなたに何をもたらしたかと聞いたところ、ほとんどの社員が様々な気付きや行動の変革が出来たと回答してきた。更にチームメンバーに支えてもらった事に対する感謝の言葉を口にした。それはある意味私の中でもとても驚く点であると同時に、心が暖まる嬉しい言葉でもあった。

私の目指す理想は、多国籍・多様性を活かした創意工夫の取り組みによりシナジーを生み出し、One Teamで市場を開拓していくことにある。この積み重ねが我々の競争優位につながるはずである。このデジタル化が加速した事を利用し、共に情報を共有し、刺激や学びを得てチームが成長出来る事も大いに期待している。その為にもマネジメントの工夫や実行力が益々重要になることは言うまでもなく、それが私の大きな挑戦の一つである。

 


3.グローバルマネジメント



同時にグローバルマネジメントも日本に席を置きながら対応出来るのではないかという考えも湧き出てくる。しかし現時点では、前述した経験した事や感じてきた内容を踏まえ、個人的には否定的な見解を見出している。以下に代表的な3つの理由を記す。

1)心理的距離

心理的距離と空間的距離にはこのデジタル社会でも相関があるのではないかと感じている。今シンガポールに住んでいるが、タイ、マレーシア、ベトナム、インドネシアと各国には本来であれば2~3時間で十分移動が出来る。現在コロナ禍が収まれば、再び半日以内にPhysicalで会える距離だ。Webでミーティング等を実施していても、実はこの空間的距離がより小さい事でお互いに安心感と信頼感、一体感を生むと考える。特に何かあったとき、すぐに相談したい時などに人はこの距離感を感じるのではないかと思う。よってマネジメントスタッフは現場に駐在し、現地社員との心理的距離を近く保ち続ける事で、ガバナンスも維持されると同時にチーム力も高める作用が生まれると考えている。

2)ブリッジ

現場にいるからこそ感じ取れる肌感覚や、温度感、状況がまだまだ沢山ある。また日本と海外のビジネススタイルや視点にはどうしてもギャップが生まれる。両国には時間的距離や経験的距離があるからだ。日本が各国の多様性や文化を十分に理解し、各国では会社のビジョン、ミッション、そして戦略をしっかり腹落ちしてもらう必要がある。その為にも日本人駐在員、マネジメントが両国間のブリッジになり、その距離感やギャップを埋めていく事がまだまだ必要なのだと考える。

3)グローバル人材

日本企業が世界でより強く勝ち残っていくためには、グローバルセンスとバランス感覚をもった人材育成が極めて重要である。これらの感性は現地で体感する事で学べることと実感しており、この機会を企業は継続して創っていく事が必要であると考える。これはもちろん日本人の海外勤務だけに限ったことでは無く、グローバル人事交流を積極的に図る事が各国の多様性が融合し新たな企業文化や戦略が生み出されていくと認識している。

 


4.多様なASEAN



今後さらにデジタル化が加速し空間的距離と心理的距離にもギャップがなくなる時代が来るかもしれない。それは、どこの国間でも言葉や文化の壁も無く、更に時間的距離も経験的距離もない5G以上のネットワークでつながる仕組みが実現出来た時ではないだろうか。つまり現時点では、我々海外駐在員やマネジメントスタッフが5G以上のグローバル通信網としての役割を担う必要があると考える。

このVUCA(Volatility/ 変動性、Uncertainty/不確実性、Complexity/ 複雑性、Ambiguity/ 曖昧性)の時代、この先どんな変化が起こるか想像が出来ない。しかし、だからこそ、One Teamで常に変化に挑戦し、変化の先の景色を共に共有し、そして「多様なASEAN」を更に加速させるべく、私も日々努力、挑戦していきたい。

 

 

宮澤 聖一  (みやざわ せいいち)
HIOKI SINGAPORE PTE.LTD. 社長(Managing director)
1992年 日置電機株式会社入社後東京営業所へ配属。2009年大阪営業所長、2015年首都圏営業所長を経て2018年2月よりHIOKI SINGAPORE へ赴任。タイ駐在員事務所長、営業本部長歴任後、2019年10月より 現職(シンガポール在住)。


HIOKI SINGAPORE PTE.LTD.について
日置電機株式会社という長野県上田市に本社を置く電気計測器メーカの、東南アジア及びASEANを管轄する販売会社。シンガポールを本社・統括拠点とし、タイ、マレーシア、ベトナムに駐在員事務所と、インドネシアには販売子会社を持つ。ローカル社員と日本人駐在員3名の、合計35名で顧客対応、販売、マーケティング活動、アフターサービス等に取り組んでいる。
当社は5カ国の拠点メンバーで構成され、多国籍と多様性を我々の優位性につなげようとASEANでの市場開拓に取り組むと同時に、ローカライズを目指している。

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