コロナ禍、50代女子の「欲望の形」を探る。

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2021年4月号『なんとなく欲望の行方』に記載された内容です。)


水面下から地上へ、動き出す50代の欲望


 

この1年を振り返ると、コロナ禍の巣ごもりで、生活者の消費意欲が減退したことは言うまでもない。しかし、春の訪れとともに次第に気持ちは緩み始め、2度に渡る緊急事態宣言もなんのその、街は結構な人で溢れている。我慢してきた消費の糸が今すぐにでも切れそうだ。そんな中、一番最初に動き出しそうな50代女子に絞って「この先の欲望の行方」を探ってみた。

「50代女子」とあえて言うが、彼女たちは、「おばさん」ではなく「女子」だ。甥や姪から名前で呼ばれる自分に快を覚える私(55歳)もそのひとり。50代は全年齢、バブルをかじっていて、現在五十路もギリギリバブル崩壊の余韻が残っているうちに社会に出たので、お祭り騒ぎの記憶をどこかカラダで覚えているだろう。財布の口も開きやすい世代である。そして、そんな彼女たちは、現在、子持ちであればそろそろ子育てから解放された頃、独身であれば貴族のピークではないか。

コロナ禍は、水面下で動いていた。オンラインで同僚や友人と横並びに映し出された自分の姿に唖然とし、慌ててスキンケアに励む、はたまた目を大きくしたり、睫毛を長くしたり。マスク着用なのをいいことに、かわいいマスクで顔半分を隠し、しみ取りに走る者も後を絶たないと聞く。

人生100年といわれるが、彼女たちは平均寿命の半分をとうに越えた。残り日を計算しながら、やりたいことはたくさんあるのに、思うようにできていない自分に焦る日々である。

 


様々な口実消費で50代欲は健在


 

「欲望アンケート」は、50代129人が回答してくれた。最初に「あなたは50代の前半か後半か」という問いかけをしたが、そこで迷う55歳が数多かったことは興味深い。考えなくても後半だろうに、「すごく迷った。前半だと思っていたけれど、後半と気づいて愕然とした」というボイスは、「おばさん」ではないことを表している。聞く前から「なんとなく欲望」がうごめいている。自分の欲望と向き合い、これから先を考えることができたと、何人かから感謝されたことも付け足しておきたい。

さて本題だ。コロナ前と今を比べての購買意欲を訪ねると、「コロナ前より減退している」と答えたのは、48.4%。「あまり変わらない」38.8%と「コロナ前より増加している」12.4%を足すと半数を超えた。欲望は健在なのだ。「なんとなく欲望を満たすために買ってしまったモノやサービスがある」と答えた女子は、64.3%で、中身を聞けば、980円のソムタム用のピーラーからはじまり、200万の車まで。

ソムタム用とは納得するが、レーザー治療18万、ブランドバックに25万、50万、ワンちゃんに40万、そしてお車200万もなんとなくとは、うらやましい。なぜ、なんとなく買ってしまうのかを問えばその理由は「変化が欲しくて」「ストレス発散」「癒されたくて」「満たされたくて」「ご褒美に」「発作的に」「逃避行」「応援したくて」「ついつい」といった口実が並ぶ。実に頷ける理由ばかりだ。50代女子の心を動かすヒントはあちこちに隠れている。

 


欲望を分解すれば・・・



あてはまる消費行動をランキングすれば、「応援消費」「お付き合い消費」「物語消費」がトップ3を占める(図1)。計画的に買い物をする女子は2割程度なのも納得。商品に物語があって、友人に勧められたら、応援の意味も含め購入したという経験は、この世代はよくあることかもしれない。「買ってもいいんだ」と自分を納得させることも大切だ。

なんとなく満たしたい欲望について、掘り下げて聞けば「仕事と子育てが終わり燃え尽き症候群のような状態です。何かしたいけど、何をしたいかわからない」「腰が重い」「あたらしいことがなかなか始められない」「もう一花咲かせたい」「男の人としゃべりたい」「老化のスピードを緩めたい」「買わないで売ってみたい」「仕事的にも女性的にも足りないものを埋められるものが欲しい」「長い人生をどう生きたらいいか」「考えるとなにもない自分が怖い」「母の老化を目の前にし、自分の体や頭脳を衰えさせたくない」「愛されていると実感したい」「富士山に登りたい」「深く考えていない自分にまた少し悲しくなる」「バリバリ仕事したい」「起業したい」「社会貢献したい」「一人暮らししたい」などなど。

多く見られたのが、「海外旅行・留学」「断捨離」「バリバリなにかしたい」という言葉。人生後半戦になり、身軽になりたいと思う一方、カラダが動くうちに夢を果たしたい、バリバリ動きたいという足掻き、叫び声。そして何をしたらいいかわからないという恐れも見え隠れする。巡礼路の最終地点である「サンティアゴ・デ・コンポステーラを歩きたい」というボイスが、この世代の欲望(海外、健康、祈り)をよく表しているような気がした。

 


なんとなく欲望はオンラインで、ぽちっと満たす



「なんとなくある欲望」を満たす購買は、オンラインもリアル店舗もという「どちらも派」が40.3%だが、比較すれば、このご時世、ぽちっとするオンライン派がやや多かった。どちらも1万円程度ならば悩まず買うという女子は多く「良ければ値段は気にしない」はリアル派で16人もいたのは驚く。

オンラインで、ぽちっとする時間帯は、夜がダントツで49.6%、真夜中は12.4%。合わせたら6割以上が暗闇消費である。では、「なんとなくある欲望を満たすのは、どんな気持ちにさせてくれる消費か」という問いには、ワクワク楽しい(41%)、ほんわか幸せな気持ち(40.3%)が1位と2位でほぼ同列だった。

心動かされるものやサービスについての自由回答にも「自分を生き生きさせてくれるもの」「ワクワクさせてくれるもの」「ワンランクアップさせてくれるもの」という言葉が並ぶ。今ある自分をちょっと引き上げてくれるような消費に、彼女たちは、より心動くようだ。

 


色や形、欲望の正体とは



「欲望とは〇〇である」の〇〇を埋めてください。こんな質問もしてみた。驚いたのは、自由回答なのに、「活力」(36人)と「エネルギー」(8人)が続出したことだ。その他で複数見られた言葉は、「なくてはならないもの」「元気」「生きている証」など。「悪」「恥」「ポイズン」と欲望をマイナスに捉えた女子はたった4人だけであった。皆欲望には前向きである。

自分の持つ欲望の色と形についても訪ねてみたところ、色は「グツグツ真っ赤」ではなく「やさしい空色」「ほんのりピンク」「虹色」と続く。欲望の形などは、考えたことがなかったという人がほとんどだろうけれど「丸」と「雲のような形」が多く各25人、続いて「形はない」18人。ハート型という女子も8人いた。どうやら50代女子にとって欲望とは、「水色の空に浮かぶふわふわした雲」のようなものなのかもしれない。

人生を振り返っての「欲望が多かった年代ランキング」では、予想通り20代がダントツ1位ではあるけれど、30代と50代は大差ない。40代は仕事に子育てにと忙しく「自分の欲望」とゆっくりじっくり向き合っていられなかったのか、最後だった。年を重ねて欲望の色も形も少しずつ変化してきただろうが、まだあきらめず舞台に立っている感がある。

ギラギラの欲望ではなく、なんとなく持つ欲望は、いったいいつまで続くかの問いには、当然のごとく「死ぬまで続く」を選んだ50代(図2)。時間もある、お金も使う素地があるこの世代を動かす鍵は、なんとなくふわふわある欲望の裏側に潜む心のうちを解剖し、丁寧に読み解くことにありそうだ。

図表 《クリックして拡大》

 

山本 貴代(やまもと たかよ)
女の欲望ラボ代表 女性生活アナリスト
専門は、女性の意識行動研究。独自の「メール文通法」により、主に20代から70代女子(エルラボ、マダムラボ)とシニア男子(ダンディラボ)の本音を探り続ける。また、2014年より14カ国16都市のアジア女性をネットワークした「亜女子ラボ」も活動中。SNSを駆使し、随時情報収集。2019年児童文学出版社「みつばち文庫」設立。著書に『女子と出産』(日本経済新聞出版社)、『晩嬢という 生き方』(プレジデント社)、『ノンパラ』(マガジンハウス)、『探犬しわパグ』(NHK出版)など多数。

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