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顧客体験設計ブートキャンプ ~今求められるCX設計~

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2021年10・11月号合併号『時間FACTFULNESS』に記載された内容です。)

過日、株式会社コレクシアと株式会社東急エージェンシー(以下、TAG) 共催で実施されたウェビナーについて紹介する。コレクシアは消費者行動の専門家として、顧客理解を起点とした分析を得意としており、TAG は消費者行動論も取り入れたコミュニケーション開発を得意としている。今回のウェビナーでは両社の強みを生かし、株式会社東急文化村(以下、Bunkamura)の事例を元にCX設計のツボが紹介された。

 


1.常に変化を続ける顧客


 

冒頭、2020年に行ったコレクシア独自のアンケート調査で、回答者の80%以上はこのコロナ禍が終息したとしても「コロナ禍以前の購買行動には戻らない」と答えたことが分かった。消費者は一度変わった生活から元に戻ろうとはせず、常に変化し続けている。

特にコロナ禍での変化は想像以上だと思われ、このままのマーケティング戦略・施策であれば厳しいことは多くのマーケティング担当者が感じていることだろう。

今回は実際に1年の約1/4 を全館休館と余儀なくされた、株式会社東急文化村が運営する大型複合文化施設のBunkamura(所在:東京都渋谷区道玄坂2丁目24-1)の解決事例が述べられた。

 


2.Customer Experience Planning Camp(CXPC)とは


 

Bunkamuraの事例解決のために、TAGとコレクシアが協業して確立したCustomer Experience Planning Camp(CXPC)というメソッドを使われた。このメソッドの特長は以下のとおりである。

1)定量調査と定性調査を組み合わせたカスタマージャーニーマップを使用し、個々の顧客のケースを4背景から深く理解できる
2)その深い理解から、施策にしっかりリンクした設計ができる
3)ワークショップ型のプログラムで、関係者全員で参加して合意形成する仕組みとなっている

CXPCの進め方は次の図のとおりである。


STEP1:
カスタマージャーニーマップを作成する。その人の背景から興味→閲覧・参加→満足→継続・推奨といったタイミングの気持ちや行動を具体的にまとめていくことで、顧客の背景を理解できるものだ。行動という結果だけ捉えるのではなくその行動に至った原因を辿っていくことで、課題解決の仮説も導出できるのが特徴である。
一人一枚にまとめたカスタマージャーニーマップを何十人、何百人と作成して分析することでパターンを把握できる。このときオンラインアンケート調査でカスタマージャーニーマップを作成する。似たようなものにはグループインタビューもあるが、コストがかかる、周りの人の発言に影響される人もいるなどの理由で、オンラインアンケートが推奨される。コロナ禍の時期にも適切であろう。

STEP2:
ここではSTEP1で明らかになった定性調査および定量調査の結果をワークショップに参加したメンバーで読み解く。これにより、ブランドのボトルネックや改善点を理解でき、GOAL設定ができる。

STEP3:
ここでは、カスタマージャーニーマップのように、認知から始まり興味→参加→満足→継続・推奨といった顧客心理・行動の各タイミングでどういった施策が必要なのかを参加メンバーでアイデア出しを行う。


STEP2で明らかになった、商品・サービスのボトルネック、改善点を解消するためには、どのタイミングでどのような施策を打って消費者心理・行動の変化を目指すのかをまとめていくのである。最終的にはすべての施策案(既存の施策も含む)をヒト視点、モノ視点、カネ視点の3つの視点から点数付けを行い、優先順位を決めるのも特徴だ。実際にCXPCを体験したBunkamuraの話では、

・カスタマージャーニーマップでの定性的に見る視点と定量調査にて、顧客の裏側が理解できた
・KPI設定や共有により、新たな施策に着手することができた
・その中でも着手するポイントが特定できた
・今回のワークショップのプロセスが、ワークショップ後の業務でも活用できた

といった実感が得られたという。

 


3.CX設計のあるある落とし穴の対策とCX設計のツボ



ここからはCX設計をする上でマーケターがよく犯してしまう問題についてまとめられた。

①顧客の行動だけを調査して顧客理解したつもりになっているケース

コレクシアから「顧客が行動した結果である数字を額面的に見るのではなく、その結果になった消費者の背景に目を向けることが大事だ」と述べられた。従来の調査で見えるのは「今、消費者はどうなのか」を示す「ある時点の結果」であるため、顧客理解(ある結果を起こした背景)を把握することは難しい。その結果が起きた背景・理由を明らかにし、「消費者を物語で理解すること」が必要。

②ペルソナやカスタマージャーニーマップが実務で上手く機能しないケース

マーケターの願望ありきの発想で作成してしまい、現実の顧客像と乖離してしまう顧客視点の不在だったり、作成することで満足してしまって施策に繋げられない、施策に落とし込むためのツールの不在だったりが原因である。

以上から、CX設計ツボは以下のようにまとめられた。

・客観的にカスタマージャーニーを描く。この際、態度変容のバックグラウンドまで丁寧に見ること
・態度変容を起こした認識変化まで掘り下げること。顧客に望む行動を促す心理的変化を設計し、施策に落とし込むこと。その際にはペルソナやカスタマージャーニーから施策に落とし込むツールの活用やタスクフローの構築を行うこと
・施策実行側の関係者全員が顧客体験の全体像を理解し、方針について腹落ちしていること
・優先順位が決まり、投資の選択と集中ができる状態になっていること。

 

ウェビナーではこの他にも実践的な事例を数多く紹介しております。興味がある方は当日の資料をお渡しをいたしますので、下記の担当者にお問い合わせください。
株式会社コレクシア  ウェビナー担当:宗行(むねゆき)
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