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ミライを照らすヒカリとなる

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2022年8月号『愛と美しさを 信じ、守り抜く 〜私たちのゆずれない姿勢〜』に記載された内容です。)


継ぐ為の読み替え


 

創業者である父の助けになりたいという純粋な想いは、猛烈なアレルギー反応と共に持続可能な道を模索し始める。

自身の情熱を掻き立てる為には表現と感動そして社会創造が必要だった。電気工事を生業としていた会社がデンキを通じて感動や喜びを人々に提供しワクワクするミライを創る会社になる。ビジョンである「デンキのミライにワクワクする」が誕生したと同時に、電気工事会社がデンキの会社に読み替えられた瞬間だった。

 


「Infinite loop」


 

企業も人も独自性を求められる一方で、既存の社会システムの硬直化は日々醸成されている。大勢に身を置くことが安全なのかそうでないかは、それぞれの立ち位置によって異なる中で、私たちは個性を最大化する道を自ら躊躇なく選択していた。

チームの行動指針である「infinite loop」は、feel「感じる」⇄action「行動する」を無限にループすることを一人ひとりに求め続けている。どこにでもある街の普通の電気屋さんがおもしろい会社にどんどん変貌を遂げる中で、私たちの表現の場は社会課題へとシフトしていく。

地域課題、社会課題、地球課題がどれほど叫ばれようが、その解決に具体策を講じる企業がほとんど存在していない。ある意味でのblue oceanの中で私たちは事業という視点ではなく、ミライという視点から生まれるデザインを起こし続ける。クライアントの要望に応えているだけでは企業のidentityを認識されづらい中で、私たちのそれは社会を通じて多くの人々に認識されると同時に大きな拡がりを持ち始めていく。

 


照らすべきミライ



業界や地域の枠に捉われることのない横断的な繋がりは次第に「照らす」という行為にも問いを立たせ始める。私たちが本当に照らすべきミライとは。電気工事の読み替えを行なった私たちに次に求められたのはミライの読み替えだった。ミライとは今より先に存在するものであり、今には無い可能性を秘めたもの。

私たちの考えるミライは「子どもたち」と読み替えられた。地球の可能性として存在する子どもたち。その学力を向上させるのではなく、彼ら一人ひとりの個性を最大化させる為に私たちはどのように在るべきか。照らし方が創り出すミライ型エコシステムへの探究は従来には無いデザインを生み出し続け、やがてアート的なアクションへと昇華していく。

それらの取り組みの一部が芸術家であるOlafur Eliasson氏のチームの目に触れ「A year in pictures」にアジアで唯一掲載されるだけでなく、アートピースである「Little Sun」の販売権や彼らの知見からなる教育プログラムを享受し日本向けにアレンジを加えたものを「ヒカリの教室」と題して多くの子どもたちに提供している。

 


バタフライエフェクト



企業という存在が再定義されようとしている。

地域に対してどのような価値を提供できるかというイメージの解像度がまだまだ低い中で、私たちの地域との繋がりや前例をみない取り組みやデザインにたくさんの反響が生まれている。しかし私たちの地域における表現は決して地域のニーズに合わせたものではない。

私たちが気持ち良いと思える表現が最上位概念として存在し、それがいずれ地域の為になってくれたら嬉しいというくらいの適当な感覚を大切にしている。

世界にはそれぞれの異なる歴史があり文化が醸成されている。大局として存在する決して抗うことのできない時代の流れを大きく変えようとするよりも、その流れの中で自身のエネルギーを全て自身の表現に繋げていく。
醸成された社会システムに対して自己犠牲をするつもりはないが、自分たちがワクワクするような社会の為には自己犠牲をするだけの価値はあると信じている。

バタフライエフェクトによってたくさんのミライを創り出して来た私たちの最大の強みは自分たちが毎日世界を変えているという感覚だと思う。

 


人類への問いと地球との出会い



デンキを通じて創り出されるミライ的なデザインの数々に違和感を感じるようになったのはある一人の子どもが発言した「地球での人間の定員は?」という問いかけだった。

ミライの視点しか持ちえなかった自分が初めて覗いた過去には、デンキを知らない人類が存在しデンキの支配を逃れる地球には今とは大きく異なる生態系が拡がっていた。人類の創造性が地球の下に存在していた時代。そこには間違いなく人類の創造性と地球との共生が存在していた。

創造性を持ちえた私たちが本当に創り続けていかなければならないもの。それは富の最大化ではなく、他として存在する地球と出会い続け、気づき続けるということであった。私たちは地球・人類・デンキの共生への道を模索し始める。

 


宇宙のミライにワクワクする



経済的な思考の先入観からの脱却を図る為には圧倒的な視点の変化を必要とされたので私たちは地球を大きく外れ、宇宙からの視点で地球を俯瞰してみることにした。そこで感じた二つの感覚。それは圧倒的な時間軸と連続性であった。

人の一生という時間軸で考えてしまうからこそ生まれる宇宙の時間軸との大局的なズレ。そして壮大な地球は更に無限に拡がる宇宙を構成する一つの要素であり、人にとっての地球と同様に万物の連続性の中に存在するという事実。

自然の摂理からなる私たちの存在は社会環境ではなく自然環境と共に成り立っている。デンキが社会と結びついたからこそ生まれた美しい景色を1000年後のミライに受け継ぐ為のビジョンとして「宇宙のミライにワクワクする」が誕生した。

事象が創るミライもあれば事象の捉え方が創るミライも存在する。私たちの捉えるデンキは自然の一部であるが故に、現代社会にとっては奇抜であり理解をされづらいかもしれない。本質的であるからこそ理解されづらい。それは人間がその時代に創り出してきたアートともどこか良く似ている。

企業が経済活動と共に創り出すアート。それこそがその企業の真の存在価値であり持続可能なミライを生み出すものであると考える。

これからも日々たくさんの思考やデザインが社会の中に存在していく中で、自然との共生の中で表現される私たちのデンキが人々の暮らしを豊かにするだけでなく、宇宙を司る生態系の一部としてミライに存在することを強く願う。

 


美しき地球



地球上に存在する全ては太陽のデザインであり太陽の歴史である。故に我々人類が失いかけている太陽との和にこそミライは存在する。太陽から発せられたヒカリが生命の源となるならば私たちが照らすべきものとは。それは人としての可能性を最大化するものであり、人のみが持ちえる感性「美しさ」だと考える。

地球の生態系に必要な人の在り方。それは地球に負荷を与える存在ではなく、地球の美しさを感じる在り方。生命がヒカリに導かれるのであれば、私たちは常に自身の中に眠る美しさを照らし続けたい。人類が創り出したヒカリが人類の美しさを照らすものとして存在したときに、誰も目にした事のない真に美しい地球が誕生するのかもしれない。



図表 《クリックして拡大》

 

渡邉 辰吾(わたなべ しんご)
株式会社ソウワ・ディライト 代表取締役CEO
1976年8月2日生まれ(45歳)。群馬県前橋市出身。
大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2005年に父であり創業者でもある故・渡邉孝が代表を努める双和電業株式会社(現・株式会社ソウワ・ディライト)に入社。2015年より現職。電気工事業を生業とする中でデンキが創り出すミライへの可能性を教育や環境分野を中心としてアート的に表現するだけでなく、群馬県及び前橋市の行政政策にも深く関与し官民共創のデザインを地域に創り出している。

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