【日本に学び、世界に通用する中国】オリジナルIPの開発を目指して

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2018年7月号『創る中国:文化・エンタテインメント編』に記載された内容です。)

私は、大学時代からアニメーションの制作に携わり、四川美術大学を卒業後、重慶にあるアニメ制作会社「資美」でアニメ作品の制作に携わり、2014年に独立、重慶にアニメ会社「彩色鉛筆動漫」を設立いたしました。

現在は株主でもあるテンセントグループの閲文集団のアニメ「マスターオブスキル(中国語原題:全职高手)」を手掛けています。


2014年から日本のアニメ会社より「BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS-」「将国のアルタイル」「レイトンミステリー探偵社 ~カトリーのナゾトキファイル~ 」「ペンギン・ハイウエイ」「曇天に笑う<外伝>~宿命、双頭の風魔~」 等の制作の一部を下請けとして行い始めました。その目的は進んでいる日本のアニメ制作のプロセスなどを勉強するためです。


そのような中で多くの工程を自社で制作できるようなフェ-ズに入り、これからは閲文集団が保有しているIP(原作)を共同で開発していくことと、自社でオリジナルのIPを開発して行きたいと考えています。


設立してからまだ4~5年しか経っていないので、人材がまだまだ育成できていない状況ではあります。しかし、日本との連携により、4年後を目処に完全なオリジナルのIPで作品を創ることを考えています。


そのために、日本を中心に多くの企業と連携して、我々のIP開発能力を高めていくことが重要だと考えております。いかに日本と良いビジネスパートナー関係を構築できるか、ユーザに受け入れてもらえる作品を作れるかについて勉強していくことが大切だと考えています。そういった日本で培った経験を元に我々のオリジナルIPを開発していきたいと考えています。


現在は中国のネット・プラットホーム会社テンセント傘下の「閲文集団」と共同で開発していますが、この度日本で「Colored Pencil Animation Japan」を設立することで、アニメにおける経験豊富な日本企業と連携し、共同でIPを開発することを考えています。それらの業務を「Colored Pencil Animation Japan」が主体的に行います。


「Colored Pencil Animation Japan」は、IP開発がメインの事業となりますが、日本企業が長い年月で構築してきたアニメの制作プロセス、日本のアニメ制作のノウハウの獲得とアニメの人材育成のスキルも学びたいと思っています。


これらは「彩色鉛筆動漫」に欠けている部分と認識しており、まだ日本から学べるものだと思っています。特に人材開発については、JAPANパートナーである株式会社ENJOY JAPANからの協力を得る予定です。


「Colored Pencil Animation Japan」では、基本的に日本のクリエイターを雇用して、日本流の習慣や日本の業界ルールでアニメ制作を行いたいと考えており、それを「彩色鉛筆動漫」と連携させたいと考えています。


作画からディレクターに至るまでの日本人のアニメ人材の採用や日本でアニメを学んでいる中国の方の採用も積極的に行っていきたいと考えています。そのように「Colored Pencil Animation Japan」で日本流のシステムを構築することで、「彩色鉛筆動漫」にも良い影響を与えたいと考えています。経験者の中途採用もあれば新卒を育てていくことも考えています。


アニメ先進国である日本の制作スタイルを構築し、豊富な中国のアニメーション人材とが連携することで、日中で協力し合うことにより良い作品が創れるようになるのではないかと考えています。


中国のアニメ業界は、非常に速いスピード成長はしているものの、まだまだジャパンクオリティに届いていない部分があり、日本から学ぶものはたくさんあります。我々は、日本から多くのことを学び、そのノウハウをいかに取り込むかが難しい道ではあることは理解しています。難しい道ではありますが、我々はその道を通っていこうとする高い志を持っています。


中国でヒットするアニメは、一概に言えなくなんとも答えるのが難しいのですが、一番は本当にいいストーリーであるかどうかが重要で、それが作品の魂だと思っています。画面がきれいだとか、素晴らしい動画やアクションシーンがあるかというよりも、最後に残るのは心に響くストーリーが一番肝心と考えています。


いろんな国にはそれぞれの文化がありますが、共通としてあるのは、人の心に響くか、感動するか、国を超えて共感できるストーリーかどうかと思っています。だからこそ、我々は国を超えて人の心に響く作品を創りたいと考えています。


アニメは国を超えることができるものと考えています。装飾とか画面の要素はあくまでもプラスの要素でコアではないのですが、例えば中国の色を出せば中国に親近感を持ってもらうことも可能だとは思います。ただ、それはあくまでもプラスαの部分と考えています。


ネットとコンテンツの関係については、中国の伝統の文化の中では、アニメは子供のものというイメージがあり、これまでは、子供の為のものというカテゴリー扱いになってしまうことが多かったですが、ネット、特にモバイルの普及によって、かなりの人が携帯によっていつでもどこでもアニメを見れるようになり、そのことでアニメの存在感が高まりました。


中国のアニメの発展に対してネットが大きな役割を担ったと思っています。昔は中国の子供や若い人たちはアニメに接触するのはTVでしかなかったのが現状で、放課後とか限られた時間にしかTVは観られませんでした。


しかし、今はIT技術の進化によって、いつでもどこでも、しかも若い人達だけでなくて、大人でもアニメに触れる機会が多くなることによって認知度が高まり、アニメが少数だけが楽しむものではなく一般大衆にも受け入れられるカテゴリーになってきました。


伝達のスピード、広さ、カバーする範囲についてもネットは、完璧に今のアニメが大衆にアプローチする手段になりつつあり、これからの中国のマーケティングにおいてネットなしではもうアニメは語れないのが現状です。


もちろん、そんなネットの影響を受けているのはアニメ業界だけではなくて、TVドラマや映画を含めて、エンタテインメント産業全体が中国のITの発展によって大きく成功してきたのは事実です。


エンタテインメントコンテンツとしては、ネットが必須のものになっていますので、ストーリーもより多くの人向けの一般向けの作品になっていくと考えています。したがって、IP開発も中国や日本だけを対象にしたものではなく、より世界を意識したものになっていくと考えています。




鄧志巍   (とぅしーいー)
1987年2月22日中国重慶生まれ
2006年中国重慶四川美術学院に入学
2008年からアニメ制作に参加2010年 中国重慶四川美術学院卒業 水彩画学部の学士学位取得
重慶視美動画公司に入職 原画担当                                                                                        
2014年重慶彩色鉛筆動漫設計有限責任公司を設立 CEOに就任
2018年日本東京Colored Pencil Animation Japan株式会社設立
2008年からアニメ制作に参加してから、原画、作画監督、演出、プロデューサーなどの職種に経験した。
【参加作品】
中国作品:
「神魄」原画、「撸时代」原画、「幻游猎人」原画
「全高手特别篇」原画・作画監督・エグゼクティブ・プロデューサー
「渡灵」作画監督・プロデューサー
「全高手峰荣耀版」(マスターオブスキルの劇場版)・エグゼクティブ・ディレクター  
日本作品:
「将国のアルタイル」原画
「ペンギンハイウエイ」原画
「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」原画

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