社会問題の連鎖的解決に 貢献する「男性の育休」 〜新しい報酬のカタチ〜

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2021年9月号『子どもドリブン:未来に挑む企業の芽』に記載された内容です。)

本荘 コロナ禍で更なる少子化が進む中、各国が子育て政策に注力する模様で、時代が変わるキーワードに「子ども」が加わりそうです。遅れている日本でも、ついに男性育休の義務化が決まりました。どう推進してこられたのでしょうか。

天野 2019年3月に参議院の予算委員会に公述人として呼ばれ、いま子育てに必要なのはお金よりも「夫の手」ですと、男性の育休義務化を提言しました。すると、ものすごいヤジを浴び、とても悔しい思いをしましたが、賛同するという方々に励ましやお力をいただくこともでき、同年6月「男性の育休『義務化』を目指す議員連盟」が起ち上がりました(天野氏は民間アドバイザーとして参画)。
 これまで、待機児童や女性議員を増やす政策提言を通じて、メディアとの接点はありましたが、取材に来てくださる記者の9割は女性でした。ところが、この議連の発足会では、50人以上の記者が訪れ、その大半が男性だったのです。男性が中心のイシューになると関心度が高くなり、これは前進するのでは?と、感じました。



本荘 提言が2019年で法改正が2021年とはスピード感がありますね。なぜこのテーマが注目を浴び、今回の法改正につながったのでしょうか。
注:日本の男性育休取得率は1割強:2018 年10 月から2019年9月までの1年間に配偶者が出産した男性のうち、2020年 10月1日までに育児休業を開始した者の割合は12.65%(厚生労働省雇用均等基本調査)。前年は7.48%、5年前までは3%未満と、低い水準だがこのところ上昇がみられる



天野 日本の喫緊の課題は、「少子化」ですよね。その諸悪の根源は男性に依存し過ぎた日本の働き方にあります。
 高度経済成長期は、長時間働くことができ、いつでも出社してくれ、何でもやってくれる人が会社で評価されてきました。その結果、子どもの運動会も行けず、誕生日に早く帰ることもできず、長時間労働で会社に滅私奉公するのを是とする文化が出来上がってきました。しかし、そうやって会社に人生を捧げた人が、定年退職したらパートナーや子どもと疎遠になり孤独を感じている。そんな話は山ほど聞きます。定年退職後、一日中誰とも口をきかないという男性が10人に1人いるという調査結果がありますが、そんな人生をもとから望む人はいませんよね。
 男性だって家族や家庭を大事にすることができる日本社会にするためにも、人生のパラダイムシフトが起きる「子育て」の開始時期=子どもの誕生を機に働き方を変えることが大切です。その変化の起点となるのが「男性の育休」なのです。このときを逃すとずっと馬車馬のように働く人生を過ごすことになりかねません。また、過去を振り返って、あのとき僕がああしていれば…と後悔するのは、子育てやパートナーシップに関してです。
 その事実を、身をもって知っている国会議員や官僚や市民が近年増えてきたのだと思います。そして、何よりも男性の育休を起点として(図1)産後うつや、ワンオペ育児、児童虐待、長時間労働、女性活躍、社会保障財政など、日本における社会問題を連鎖的解決すると考えて、男性の育休推進に共感してくださった方が増え、世論が味方してくれたことがスピード感のある法改正につながったと感じています。



本荘 子どもができて、家族が増えたという人生の最も大きなライフイベントから問題が吹き出していることを示すチャートですね。結果として、企業が男性を過度に縛ることで人生や家庭を不幸にするサイクルをつくっているとみることもできますね。


天野 残念ながらそうだと思います。


本荘 高度成長期だと、男は仕事。あとの事は専業主婦の嫁が全部やれという、片働きの社会でした。(これもひどい話だと思いますが)それで、日本社会は何とか回っていた。しかし社会が共働き主体に変わり、今は女性の7割(20〜59歳の)が働いているので、そうはいかない。


天野 そうなんですよね。高度経済成長期においては、日本も人口ボーナス期(総人口に占める生産年齢人口の割合が上昇し、労働力が豊富になることで経済成長が促進される時期)で潤沢な労働人口が確保できました。また重工業の比率が高く大量生産する事で経済が潤う時代だったので、(平均的に)体力のある男性が仕事、女性は家庭という性別で役割を分担する方が効率的だったのです。ただ、今は深刻な少子高齢化で労働力の確保が難しくなっていることに加えて、市場のニーズも実に多様になってきています。旧来の働き方では、経済成長や維持が難しくなっているのです。その証拠に1997年頃から共働き世帯の方が増え、今や専業主婦世帯は共働き世帯の半分以下です。冷静に考えればわかることですが、主婦の妻が外に出て100万、200万を稼ぐ方が、既に一定程度の収入のある夫の年収を100万増やすよりも容易なのです。ですので、妻もリソースを外で使うのですから、夫もリソースを家庭に使う必要があります。



変わる仕事と幸せの価値観




本荘  9・11からアメリカでも職業選択の価値観が変わってきました。日本でも、特に若い世代は、上の世代と比べて価値観が変わってきています。天野さんの著書(小室淑恵氏が共著者)にもあるように、パートナーに対して育休を望む女性が増えています。


天野 おっしゃるとおりで、若者のマインドが仕事中心から私生活中心に戻ってきています(日本生産性本部の新入社員の意識調査)。


本荘 バブル崩壊から仕事中心の人が増え(生活中心が減り)、2013年から逆転が進んで生活中心の人が上回っていますね。


天野 おもしろいですよね。多くの若者は、自分の親たちが幸せそうに見えないそうです。先日、「#男女共同参画ってなんですか」というサイトを立ち上げた櫻井彩乃さんが、パブリックコメントを30歳以下の若者から募集したところ、残念なことに、「お父さんみたいになりたくない」というコメントが複数ありました。これは切ないですよね。お父さんは家計を支えようと一生懸命働いた結果、父親不在の家庭を作ってしまった。当時はこれがスタンダードで間違ってなかったと思いますが、子ども達から見るとお父さんは幸せそうじゃないから、ああはなりたくないと。
 若い世代は、お金や地位・名誉=幸せという対外的幸福よりも、自分の成長やコミュニティへの所属、家族・友人との関係性が高いほど幸せだと肌で感じ取っているんですよね。
 年収が7万5千ドル(約800万円)を超えると、報酬の増加による効用(幸福度)はほぼ頭打ちになる、という有名な米国の研究結果がありますが、これを理屈で知らなくても気がついています。ほかを犠牲にしてお金を稼いでも幸せになれない、稼ぐのは一定程度でいいと思う若者が増えていると感じます。



本荘 自分もハピネスのワークショップをやるときに、これを示して、お金と幸福度の議論をします。


天野 若い人たちは育休や余暇の時間、自分たちが望む働き方などを求めています。例えば、パフォーマンスを発揮するのに自分が最適だと思う働き方や場所を選んで仕事ができる会社がありますが、若手の優秀な社員たちはその点に重きを置いている。つまり、新しい報酬のカタチになっているのです。よって今後は、個人が求める働き方が実現できる会社が、人を惹きつけるようになると思います。育休も自由に取れない思想の会社なんて、もはや選ばれなくなりますよね。



権利である育休がロクに取れない日本の実態




本荘 これから育休を取ろうという男性数名とお話ししたとき、育休をちゃんと取らせてもらえるのか、育休を取ったあと自分は会社で大丈夫なのかとか、彼らは職場のことで頭が一杯でした。日本には、育休が取れる法律も、他国に比べるとより金銭的に補ってくれる制度もあるのに、育休前におびえる社員を日本の企業は生んでいる。何でこんなことになっているのでしょうか。


天野 ユニセフの調査によれば、日本は世界で一番充実した男性の育休制度を作りました。取れる期間も長いし、夫婦同時にダブルで取れるというのは日本だけです。でも制度が良くても、実際は取れない。必要以上に会社に忖度してしまっています。とは言え、その気持ちもよくわかります。私もサラリーマンだったので。


本荘 法制化はされているが、取得率がとても低いという歪んだ状況になっている背景は何でしょうか。


天野 一番の要因は、取らせない/取られたら困ると思い込んでいる「空気」ですね。そして、会社に制度がないという声をよく聞きます。三菱UFJリサーチコンサルティングの調査によると(他の調査も同様な結果ですが)、育休を取らなかった理由は、育休制度が未整備、雰囲気、お金が上位三つです。
 実際、会社の制度がなくても法律なので取れるのですが、部下も上司も同僚もみな会社の規定集の中に記載がないと、うちの会社で育休は取れない。と思っています。これは、男性に限らず女性の場合も同様で、女性でも育休を取らない方が21%います。取れないと思っているんですよね。法律で定められた権利なのですが・・・。



本荘 これは上司を含め会社側が法を無視している……。大企業でも取らせない空気の会社はいっぱいありますよね。


天野 無視しているというか、多くの企業は男性でも育休を取れることを知らないんですよね。一方ご指摘の通り、取らせない空気を作っている企業もあります。育休を取らせたくない企業にとって大きな理由の一つには、その人が休んだら、そのプロジェクトが止まる!と思っていることです。情報が共有されず、仕事が属人化しているため、その人が休むとその仕事は誰も引き継げないから、休んじゃダメとなっているのです。でも、そんなやり方で、インフルエンザやコロナに罹患したらどうするんでしょうか?
 BCP(Business Continuity Plan=事業継続計画)の観点からも企業 にとってリスクが高いにもかかわらず仕事の属人化が常態化している企業は多いですよね。



本荘 男性の育休は、取得してもかなり期間が短い方が多いようですね。


天野 そうです。男性の育休取得の内訳は、何と36%が5日未満、2週間未満が7割です(2018年度)。適切な男性育休期間は1カ月から2カ月という説もありますので、取得率だけでなく、取得日数を増やしてほしいと思います。
 大企業はだいぶ取れるようになってはいますが、5日有休といっていて、つまり5日が上限という暗黙の了解が形成されているという話はよく耳にします。育休が取りにくいから、有休消化の形で取る隠れ育休も最近増えています。




劇的に男性育休が広まった先進国




本荘 男性育休義務化で、劇的に育休取得率が上がった国もありますね。


天野 そうです。ノルウェーでは過去男性育休取得率はわずか3%だったのですが、1993年から給付金など法制度改革することで、9割になりました。
 ノルウェーでこれだけ増えた要因の一つに、「育休の伝染」という効果があるとも言われています。上司が育休を取った場合、部下に与える影響は、同僚が取った場合の2.5倍も強いという調査結果があります。また、職場で不利に扱われないと経営側がしっかり表明する、そして給付金や会社で表彰するなど、当事者のパパたちの背中を押してあげることが大切です。



本荘 経営側には大きな役割があるんですね。


天野 本当にその通りです。最近では、ボルボというスウェーデンの自動車会社が、グローバルで育休を24週、しかも有給で、子どもが3歳になるまで分割が可能という制度を作りました。IT系の企業は業界内の採用競争力のために制度を充実させているケースがありますが、老舗企業でも最近徐々に経営側が変わり始めています。ちなみに、スウェーデンでは、パパが幼少期の子育てにとても関わっています。


本荘 シンガポールでは、子どもに勉強を教えることにパパがすごい時間を使うらしいです。パパが、子どもの試験勉強のヘルプをするから俺は休むと平気で言って、会社のみなが納得して、頑張ってねという、そういう社会らしいです。各国各様ですが、パパが子どもと家庭にかかわる時間が、他国は日本よりも多いのは事実です。



注目される育休先進企業




本荘 日本でも先進的な会社が出てきていると聞きます。


天野 そうですね。男性育休に積極的なのは、積水ハウスさんとかメルカリさんなど。中小企業の代表例はサカタ製作所さんです。150人規模の新潟の会社で、私も取材しましたが、多くのメディアから取材が殺到しています。特に採用においてブランディングの効果があり、人手不足といわれる地方の中小企業にもかかわらず、採用に全く苦労しなくなったと聞いていますし、業績も上がっています。


本荘 広告効果に換算してもすごいですよね。


天野 ほんと、そうだと思います。それから、200人ぐらいの技研製作所さんという土木工法の企業ですが、数少ない女性社員で結成された社内プロジェクトからの発案で施策実施し、男性育休取得率0%から一年で30%にまで向上させました。しかも取得平均期間は110日間と非常に長いのです。その結果、厚生労働省主催の「イクメン企業アワード2020」でグランプリを受賞しました。これもPR効果は大きいと思います。
 人材獲得が難しい中小企業こそ早く取組んで自社の強みにしてほしいですね。



本荘 大企業はどうでしょう。


天野 積水ハウスさんは、経営者のリーダーシップで社内のスタンダードを変えています。3歳まで1カ月以上の育休を有給であげるから、全員どこかで必ず取れと。社外へのメッセージとしても、『子育てを応援し、社会を先導する「キッズ・ファースト企業」』として、『「わが家」を世界一 幸せな場所にする』とうたっています。
 すると、育休を取らないのはむしろ仕事を調整できないダメ社員だとなりますよね。企業文化を変えるには、こうしたトップの力は有効です。ちなみに、経営者がスウェーデン出張でスウェーデン人男性の家庭進出の高さにショックを受けたことが改革のきっかけになったそうです。



本荘 子どもファーストへとリブランディングしたのですね。他にはありますか。


天野 多くの企業では、子どもたちの認可保育園入園の可否が毎年2月ころ判明するため、女性社員を4月からの戦力としてカウントしにくく、人材配置が難しいと言います。それがマミートラック(あたかも競技場のトラックをぐるぐる回るだけで昇給・昇進できない子育てママ専用のキャリアコース)にもつながっていると。しかし、もっと計画的に職場復帰できる工夫もあります。
 メルカリさんは、2017年に値段が高い認可外保育園と認可保育園との差額を補填するから、早く復帰しておいでとしたら、出産から5カ月以内くらいで大半の女性社員が職場復帰したそうです。0歳児保育は保育料が高いので、金銭的な心配が払しょくされますし、認可外に預けていると認可保育園に入りやすくなるメリットもあるため、多くの社員が工夫して計画的に復職できるようになったのです。
 メルカリでは、さらに2021年に社員が育休から復帰して子が満1歳になるまで保育園やベビーシッターや不妊治療や卵子凍結費用の補助をはじめ、日本企業では飛び抜けた支援をしています。



本荘 社員に向けたインナーブランディングでも…。


天野 こうした社会の流れに抵抗するよりも、他に先んじて取組んだ方が圧倒的に効果が高く、かつ、今だったら企業の取り組みを世の中に広められる、オピニオンリーダー企業にもなれると思います。



男性の育休義務化などの法改正とは




本荘 男性育休義務化を含む法改正は、具体的にどういうものでしょう。


天野 今回の法改正のポイントは次の通りです。

①個別周知と意向確認/環境整備の義務
 企業は育休対象者に対し、個別に制度説明や意 向確認をすることや、相談窓口や研修などの環 境整備が義務づけ
②非正規雇用の緩和
 契約社員・パートタイマーなどの有期契約の非 正規は入社1年未満でも育児休業を取得するこ とが可能に
③男性産休創設
 父親が通常の育休とは別に生後8週まで(最大 4週間)分割取得できる制度の新設
④分割可能
 育児休業期間を2回まで分割して取得が可能と なり、男性は③と組み合わせると最大4回に分 割が可能に
⑤大企業 公表義務 
 従業員が1000人を超える大企業には育休取得 率の公表が義務づけ
   注:①②2022年4月~/③④2022年10月~   (予定)/⑤2023年4月~

特に、①がポイントです。すべての企業が男性育休取得可能なすべての対象者に対して個別に周知・確認するのが義務となります。ホームページに表示するなどはダメで、「本荘さん育休取りますか?」と個別にちゃんと確認しなければなりません。




経営、人事、現場がやるべきこと




本荘 ずいぶん今までとは変わりますが、企業は何をすればいいのでしょう。


天野 人事を中心に皆さんがやることです(図2)。世の中が変わるので、対応が遅れると、コンプライアンス違反やレピュテーション(世評、評判、評価)など様々なリスクがあります。先にきちんと制度を整備する方がエンゲージメントも上がりますし、採用の面でもメリットがありますから、早めに対応策を皆さんで検討して、経営トップが社員に対して説明し、中間管理職が腹落ちして自分の言葉で部下にメッセージが伝えられるようにすることです。2022年4月までには体制を整えたいですね。


本荘 これは、ある程度リードタイムがかかりますね。


天野 すべての社員に、この変化を周知し理解してもらうには、1回言えばすむという話ではなく、時間と手間もかかります。


本荘 育休つぶしをしていたような上司たちが、新制度を通達されて、戸惑いませんか。


天野 おっしゃる通りです。やはり経営トップがきちんとメッセージを出して、繰り返し言わないと、マインドセットは変わりません。これまで「育休なんてふざけるな」みたいに言っていた、演じていた人が、「育休取った方がいいよ」っていきなり翻るのは簡単じゃありません。これまでの正解が変わるということですから。
 私たちも最適な教育プログラムを開発しています。例えば、管理職のコミュニケーション研修に2人ペアになって、上司カードと部下カードを配って役を演じるロールプレイングがあります。部下役が「育休を取りたい」と言い、どう対応するか。というものです。パートナーのことや保育園の状況や復職、働く事への価値観など心理的安全性を損なわずに聞いていくことが必要で、傾聴スキルのトレーニングの仕立てになっています。
 新しいマインドセットや行動に変えていくのは、上司だけでなく、その上の上司の役目でもあるし、会社側の役目でもあると思います。



本荘 こうしたマネジメントや企業文化の変革、そして脱属人化の業務改革など、単に法改正に合わせるだけでなく、企業全体の革新として取り組んだ方がよさそうですね。


天野 そうですね。社員と家族がより幸せになることに留まらず、多くの優秀な人が集まり、生産性や創造性が高い企業へと進化するために、経営戦略として価値のあるテーマだと思います。

 


求められる両親の教育




本荘 育休を取る親へのサポートのニーズも出てくるのでは。


天野 企業が主導的に「親教育」をやることをお勧めしています。例えば、管理職研修の中に組み込む、夫婦で参加できる両親学級を実施するなどが考えられます。
 ダイキン工業さんでは、育休後の復職研修に女性社員とそのパートナー、それに女性社員の上司にも参加を促しています。そして最近更にパワーアップして、社内結婚の場合、上記に加えパートナーの上司の合計4人を出席させています。女性社員側に家庭負担が偏ると、その女性社員の上司は困ります。男女共に同じ様に分担できると夫婦のリソースバランスがとれるので、両方で共有することが大切だと気がついて、こうされているとお聞きしています。これらの取り組みが素晴らしいのは、男性側にも家庭負担を担ってもらうことで、これまで課題だったマミートラックの問題の解決に寄与するということです。



本荘 色々な面でパパ・ママの教育が足りていないと思います。親になるための教育が、日本には全然ありませんよね。


天野 残念ですが、おっしゃる通りですね。親になっていきなり本番!ではなく、事前に夫婦のこと、子育てのこと、家庭のことを学ぶことがとても大切だと思います。


本荘 育児だけでなくママについても。


天野 産後の女性は体が傷ついていて、ホルモンバランスの乱れや睡眠不足で情緒不安定になったり、産後うつになりやすかったりします。こういった前提の知識がないと、イライラしている妻に対して「ウチの嫁さん性格が変わった」とだけ感じ、不仲になったままやり過ごしてしまうこともありますよね。
 そして、子どもが生まれるのを機に、自分が幸せに生きるための生活トレーニングと思って、親教育・両親学級に臨んでもらえると良いと思います。子供の成長プロセスを知った上でする子育ては楽しいですし、料理や洗濯・掃除などが夫婦共にできるようになると、本人だけでなく家庭のQOL(Quality Of Life=生活の質)は圧倒的に高くなります。
 また、新生児・乳幼児期だけでなく、学童期などの子育てを通じて、コミュニケーションや人との関係、性教育などについて話していくうちに、自分の価値観をアップデートすることができ自分の成長につながります。子育ては一方的なものではなく、大人育てでもあると思いますし、よりよい社会づくりのための学びになると思います。



本荘 今日は貴重なお話をありがとうございました。

 

図1・図2《クリックして拡大》




(インタビュアー : 本荘 修二 本誌編集委員)


天野 妙(あまの・たえ)
政策起業家
合同会社Respect each other代表 
みらい子育て全国ネットワーク代表
日本大学理工学部建築学科卒業後、リクルートコスモス(現コスモスイニシア)を経てRespect each other を設立。組織の働き方改革及び女性活躍の推進コンサルタントとして活躍する傍ら、みらい子育て全国ネットワーク の代表も務める。国会の予算委員会や厚生労働委員会等で公述人や参考人として意見陳述を行うなど、男性育休義務化の火付け役としても知られる。プライベートでは認知症の母の介護経験もある3女児の母。
著書:「男性の育休~家族・企業・経済はこう変わる~」PHP新書(小室淑恵共著)、「総務の山田です。」(共著)

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