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ツノダ フミコ

巻頭言

Z世代 ホントのところ

いまさら、の「Z 世代」です。マーケティング界隈に関わりがなくても、今やこの 3 文字を見ない日はないほどあちこちで話題の世代です。さまざまなメディアで玉石混交、針小棒大なトピックスが取り上げられています。だからこそ、の Z 世代特集です。

あれこれ語られている Z 世代イメージの検証が目的ではありません。イメージがあたかも実像であるかのように錯覚して戦略に向き合う怖さ ・ 危うさを、今一度足元から見つめ直すきっかけのひとつにしたいと思いました。

まずは定量データをもとに他世代とも比較しながら Z 世代を理解していきます。論考の後半では Z 世代を一括りで語るのではなく、価値観クラスターに表れている二極化にも言及しています。次にこの世代の恋愛観を中心にした彼ら彼女らの家族観。
そして、5 名のリアルライフを見ていきます。最後は ASEAN のZ 世代についてお話をうかがいました。

安易なラベルを貼られ、わかったつもりになられて喜ぶ人がいないように、Z 世代というラベルで一括りにしたくない、というのがこの特集企画のはじまりでした。わたしたちは Z 世代という情報を消費するのではなく、理解し活かしていく側でありたいと思います。

本誌編集委員長 ツ ノ ダ フ ミ コ

Insightへの入り口

そこにいながらにして「今やっている」ことに忙しい人たち

さまざまなソースからZ世代を見てきた。スマホネイティブであるZ世代の特徴といわれている、つながり重視、環境意識や社会貢献意識の高さ等々は確かにその通りではあるが、Z世代全体から見れば世代の11%の人たちの特徴でもあった(10ページ)。

一方で4割を超える価値観クラスター名「無気力あきらめ派」(同)に属する人たちがいる。各世代に共通する価値観クラスターとして汎用性が高いクラスター名となっているが、Z世代を研究していく際にはこのクラスター名を額面通りに受けとってはいけない。まるっきり無気力なわけではなく、また何もかもをあきらめているわけでもないことは、特集1.の高橋寿夫氏も言及の通りである。

このクラスターの興味深い点は社会問題に対する認知項目数が世代平均より多いことに表れている(11、12ページ)。スマホを片手にじっとしながらも大量の情報を蓄えことはやめない様が目に浮かぶ。とりあえずいろいろな情報を入れながら、いかに失敗を避け、損する道を選ばず、労力を掛けずに実を得るかを考えている。彼ら彼女らの頭の中の忙しさを想像すると、それは別に無気力でもないし、あきらめでもないだろう。

「今やろうと思っていたのに」という台詞は昔から急かされたときの定番だが、これからは「今やっている」に置き換わっていく。外から見ただけでは行動しているかどうかわからない行動が、Z世代を筆頭に既に年代職業を問わず増えている。ソファでじっとしているように見えても、その実、自国ではないデモに参加し、他では売っていない自分にとっての特別なものをみつけ、困っている人を助け、いつものように授業を受け、バイトをして、寄付をして、友だちと待ち合わせをして、仮想空間内で会う。そこではリアルにおける関係性とは異なる関係性が育まれているかもしれない。

第三者に見えている姿と当人が行っている行動が一致しない未来が既に来ている。そこでの「わたし」と、ソファに座っている「わたし」は同じであって、違う「わたし」でもある。

世界はまさに一寸先は闇。日本の、そして世界のZ世代、そしてそれに続くα世代は何を選択していくのだろう。いずれにしても、今までとはまったく異なる意識とやり方でこれからの社会をつくっていくのだろう。まさにルールが変わっていく時だ。

巻頭言

中年という絶滅危惧種

「中年」はもはや幻想の生き物です。

あなたの周りに40~50代の方はいますか。その40~50代の方々は「中年」っぽいですか。ご自身が該当する方もいらっしゃるかもしれません。その場合、あなたご自身は「中年」を実感することはありますか。
昭和、平成、令和と経て、どうも最近は中年らしい中年が減ってきたような気がします。今回の特集テーマはまさにそのような思いに端を発しました。
中年層に限らず、シニア層も含め、近年、当事者における年齢意識は薄れてきています。いわゆる性年代でのターゲット設定が既に意味を成しにくいという実感は多くの読者の方が経験済みでしょう。
加齢に伴う身体変化は実感しつつも、価値観や生活意識は大きく変わることなく過ごす毎日。そして、ある日突然目の前に現れる、各種割引や制度などの「シニア」な現実。そこで初めて「そうか、そういう年齢か。わたしはとっくに中年だったのか」と気付く人も多いのではないでしょうか。
ライフステージや働き方が多様化し、ビジネスシーンもカジュアル化が進んだ今、中年層に該当する年代の人はいるけれど、いわゆる中年はもはやいないのではないか。若いときの価値観やライフスタイルのその後は、すぐにシニア的な生活になるのではないか。
これが本号の仮説です。あなたなりの中年像を頭に思い浮かべながら、さまざまな視点から見た中年層の実態をお読みいただければと思います。

本誌編集委員長 ツノダ フミコ