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注目の新刊

『マーケティングは進化する(改訂第2版)
水野 誠 著 同文舘出版

本書はマーケティングの初学者向けに2014年、初版出版された教科書の改訂版だ。
評者が同書を読むきっかけとなったのは知人である著名マーケティング学者から「水野先生が最近出した教科書は最新のマーケティング事情と理論を上手く取り入れ執筆されている」と聞いたからだ。確かに、マーケティングの伝統的枠組みであるSTP+4Pを基礎にしながら、最新の研究成果を英語と日本語両方についてバランスよく紹介し基本用語を解説している。また、マーケティングサイエンスを専門とする著者らしく同分野で基本だと考えられる数理モデルをもれなく取り上げ、わかりやすく説明している。
本書の最大の特徴は8章の「クチコミとソーシャルメディア」にある。インターネットの浸透、ソーシャルメディアの台頭によってマーケティングの実態がこの数年で大きく変わろうとしている。その変化の行方を適切に見通すうえで必須の分析枠組みを最新データを分析した研究成果とともに紹介している。もちろん、本書は実務家にとっても読みごたえあるもの
になっている。
著者が提唱するトップダウン型とボトムアップ型の複眼発想に触れ目から鱗が落ちる者も少なくないだろう。

Recommended by 神戸大学大学院経営学研究科 教授 小川 進 

 

 

『DX CX SX ―挑戦するすべての企業に
爆発的な成長をもたらす経営の思考法―

八子 知礼 著 クロスメディア・パブリッシング (インプレス )


日々、「DX」という言葉を目や耳にする機会は増え、その言葉は広く知られるようになりました。
では、「『DX』という考え方は十分に理解され、その役目を終えたのか?」というと、「NO」でしょう。デジタル化においては海外企業に大きく水をあけられていると言われている日本企業。「 真のDXの意味」を理解し、体現できたといえる企業はまだまだ少ないというのが現実かと思います。もし、多くの国内企業が次々に進化して、国レベルで「真のDX」が推進できたなら、産業構造が変わり、今後数十年単位での経済発展を可能にし、持続可能な社会の実現に貢献し、未来をつかみ取る先進国としての地位を確立することも不可能ではありません。
本書『DX CX SX』は、そのような日本という国の再興を射程に捉えつつ、しかし足元の現実から一歩一歩着実に前進する方法を【概念・手段・事例】の3つの軸で網羅的にまとめた稀有な書籍です。
DXは、その単語の持つ意味が広い特徴を持っています。
だからこそ、「DXというものは、どこか遠いところにあるもののように感じる」あるいは、「資金力のある企業が取り組む領域だから、うちには関係ない」といったように、「自分たちとはかかわりのないもの」と思っている企業の経営層・マネージャー層が多いと思います。
ですが、そんな方にこそ、本書を手に取ってほしいのです。
DXがどこか遠いところにあるもの」と感じる時、多くの場合は足元に転がっている問題と理想の間にある「境目」に目を向けられていないことが多いのではないでしょうか。もしそうだとすれば、本書の一つの特長である、「豊富な事例と、踏むべき段階の図解的な明示」が、大いにその助けとなるでしょう。
どうか、「DX」という言葉が陳腐化してしまう前に、多くの人に本書を読んでいただき、いま、あるべきデジタル化の真の姿とは何か、そして何から始めるべきなのかを知ってほしいと思います。やるかやらないかは、その本当の意味を知ってからでも、決して遅くないはないでしょう。

Recommended by 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 教授 白坂 成功