巻頭言

起業家的マーケティングで新時代を切り拓く ~予測不能時代の新戦略~

世界は変わっている。いや、まだまだ大きく変わり続けている。

2019年末からのコロナ禍や戦争は、事前に人々の予想にはなかったことでした。しかし、今この事態にグローバル社会は振り回され、世界中のバリューチェーンは大混乱しています。そしてこれらの出口はいまだに見えていないのです。

1920年代から体系化を進めたといわれる近代マーケティングでは、市場動向に関する分析を上流工程で行うこととなっていますが、確度の高い分析がこれほど困難な時代も第二次大戦後初めてではないでしょうか。言い換えれば目をつぶったまま組織を走らせなくてはいけないということになるかもしれません。

一方で、事業は継続と成長を必ず求められます。このような中、2022年10月に行われたアジア・マーケティング連盟の年次総会は、グローバルに対峙すべき課題として「起業家的マーケティング(Entrepreneurial Marketing)」をテーマとして開催されました。このテーマは本年3月に上梓されるコトラー教授の新刊本のテーマでもあり、当面の経済回復にあたっての主要なテーマとして、多方面で議論されるべき課題となるでしょう。

なぜ今、「起業家的マーケティング」なのか、そしてわれわれマーケターは何をどう変えるべきか、早急に方向性を定める必要があるのではないでしょうか。本特集ではこの「起業家的マーケティング」というテーマの発信者の主張と、これまですでに実践してきた企業の方々の“なま声”をお届けし、皆さんの問題意識のお役に立てたいと考えました。

本誌編集委員 福島 常浩