マーケティングホライズン2023年1号

ここからはじめる―きっかけをつくる―

今、ここから

はじまりの年、2023年の私のイメージである。国内外を飛び回っていた生活から一転、ここ2年ほど積極的に外に出られない生活が続いたことで、自分自身や身の回り、日本国内など自分の身近なことに目を向ける機会が増えた。これまでの生活を強制終了させられた結果、行ったことがなかった日本各地を訪れる機会が増え、頭で理解していた以上に豊かで素敵な場所があることを知った。世代なのか、海外生活を経たことも影響してかはわからないが、これまでも海外や海外ブランドが全て素晴らしいとは思っていなかったが、知的欲求や好奇心が強く、見たことがない景色、文化や伝統に触れること、知りたい欲求が常にあるため、海外旅行は欠かせない日常だった。しかし、気軽に海外に出られなくなり、巡った日本全国には見たことがないもの、想像したことがない景色が広がっていた。南北に長い日本は東京からたった数時間で別世界は沢山あるのだと改めて学んだ。この2年で様々なものがリセットされたからこそ、リスタートの年であり、その素晴らしき学びを今年は周りに伝える年にしていきたい。

1990年以来、約32年ぶりの驚きの円安水準を更新し、一時は1ドル=150円台にもなった昨年、さらに急激にインフレが進むNYを中心に、海外から一時帰国する友人たちは、何もかもが安すぎる・・・と驚き顔だった。これは、海外に行く、海外の物を買うことには不利に働くが、この機会に日本に来てもらう、良さを知ってもらう、日本製品を海外に売り込むにはチャンスだ。豊かになったアジア圏から、日本の百均は超安いうえに、クオリティが高い!と人が集まっていたし、爆買いなどもあったが、これからは安いものを沢山買いに来てもらう以上に、価値があるものをきちんと伝えていくことに注力していく必要がある。世界へ、日本、そして日本製品を売り込むのに機は熟した。海外生活を通してできた友人知人を通じて、日本の素敵なものを国内外に発信していくことをさらに意識していきたい。

日本は素晴らしいものが沢山ある一方で、見せるのが不得意な人が多いというのはアメリカ生活全般を通して感じた。奥ゆかしさ、謙虚さを美徳とする国民性は素晴らしいが、異なる宗教観や文化、人種、ルーツを持つ人に伝えるためには、自信を持ってプレゼンテーションすること、ブランド化していくことが重要である。グローバル化のその先は、自分の半径3メートルほどのごく近しい距離を改めて見つめ直した上で100年後の未来を考え、アクションしていく。足元をきちんと見つめ、はるか遠くをみすえ、目指す。この二つの視点が今後、より重要になるだろう。そのために、常に仲間を募集中なので、我こそはと思う方をお待ちしています。

多様な価値観に触れる場

海外に日本の良さを伝える一方、今年は国内での場づくりにも力を入れていきたい。性別や年齢を超え、様々な人が交流することで見えてくるもの、生まれるものがある。例えば、40代以上でよく聞こえてくるのが、会社に対する帰属意識の変化である。WORK FROM HOMEやフリーアドレスになったことで、会社に置いていた荷物を自宅に十数箱分も送った影響が大きいという。いつでもどこにでもいけるという感覚ができたからだろうか。一方で、若い世代の友人たちは、あえて家を借りておらず、毎日違うホテルに泊まっていて会社に自分の荷物を置いている。フリーアドレスであっても、自宅がなく荷物が置かれている会社には帰属意識が芽生えるかもしれない。そもそも自由な彼らにとっては物と帰属意識は繋がらないのかもしれない。同じフリーアドレスという状況一つとっても、その他のシチュエーションが変わることで見える世界は180度違っているように思う。

だからこそ、積極的に多様な年代、性別、居住地などの人が交わる場所を今年は作っていきたいと思う。今の主流を作る世代の価値観に触れていないと見えない世界は沢山ある。Z世代と積極的に交流している知人から、当事者たちは横軸の世代ではなく、縦軸というか縦横無尽にまたがれる世界だと彼らは捉えていると聞いた。彼らにとって世代とは年齢区切りではなく、価値観を共有できるかどうかということが重要なのだという。多様な時代、価値観も世代によって区切られるという感覚はもはやナンセンス、自由に行き来できるのがZ世代なのだと。今、世界で起こっている様々な問題の多くは、本来、他者へのリスペクトがあれば起こりえない問題だと感じているからこそ、様々な価値を尊重できる環境づくりに取り組みたい。

デザインファシリテイターとして

自分自身を見つめ直したことで、得意なことにフォーカスしていく必要性を感じている。マーケティングを中心としたこれまでのキャリアを基に、新たな役割として、デザイナー、クリエイター、アーティストと企業の繋ぎ手や通訳になることをはじめる。場づくりにも通ずる部分だが、人と人を繋ぐこと、人と企業を繋ぐことなどはこれまでもやってきたが、得意とする価値観が似ている人たちの見極めや好むものの傾向などを瞬時に汲み取るスキルをこれまで以上に意識し、その得意な部分自体を仕事にする。日本語という同じ言語を話していても、専門領域や好むものが違うと話が通じているようで通じていない。そんな光景をこれまで沢山見てきたからこそ、コネクターとしての役割をより意識することで、プロジェクトに関わる人間が最終的に満足度が高くなる場を提供する存在になれたらと思う。2023年、様々に揺れそうな一年だからこそ、常に明るい未来を描き、共に目指す仲間を増やしていきたい。

 

吉田 けえな

デザインファシリテイター

PR 会社や百貨店のコーディネーター、雑貨ブランドのディレクター兼バイヤーなどを経て渡米。NYを拠点に世界中で、見て、着て、食べた、リアルな視点を大事に、バイイングやリサーチを行う。現在は帰国し、情報収集能力を活かし、商業施設のプランニングアドバイスやポップアップショップの企画立案、デザインイベントやカンファレンスの運営、内装プランニング、パーソナルスタイリングなど多岐にわたり、活動中。本年からはデザインファシリテイターとして点と点を繋ぎ、線や面に展開していくことを中心に活動領域を広げていく。

マーケターの仕事について もう一度考え直す

Previous article

新春鼎談 持続可能な未来を実現する マーケティングの実践に向けて

Next article