マーケティングホライズン2023年1号

人生を豊かにするセルフキャリアについて考えてみませんか?

40代後半で転職。失敗と成功を振り返って

私は人材コンサルティング会社へ40代後半に転職し4年目を迎えました。日本の企業経営者と価値ある出会いをつなぐエグゼクティブのご紹介、次世代後継者選びの支援、エグゼクティブコーチングを通じた人材育成の仕事をしています。
しかしながら、今のポジションを得るまでにキャリア選択の失敗もしてきています。マーケティングリサーチの会社で営業として20年間勤めてきましたが、自身の成長の限界を感じ、異なる分野へのチャレンジとして、小さなITベンチャー企業へ転職しました。結果、これまで経験したことがなかった業界と若手が多い組織になじむことができず、3か月で挫折し、退社。
この苦い経験から、キャリアを棚卸してから勝てるフィールドを整理して、現職につきました。 まずは、営業経験を活かせること。そして、30歳の頃からライフワークで活動していたリーダーシップ研修やコーチングなど、人材育成の経験を存分に活かせると考えたからです。

今振り返って思うことは、40代後半の転職はやみくもに動くのではなく、これまでの経験の棚卸を丁寧に行い、自身の強みを活かし勝てる領域の見定めること。また、世の流れを読み世代間の違いを認識することが大事だと感じています。
プログラミングやITの分野では、リテラシーの高い若い人たちに到底かないませんが、マネジメント経験、社会経験をすることで培ってきた人脈などシニアになればなるほど人間力の社会的価値が高まると思っています。

日系企業のミドル~シニア世代(40~50代)の現状と課題について思うこと

私は、職業柄毎月100名ほど面談をしていますが、同世代である40~50代は、特にキャリアに悩みを抱えている方々が多いなと感じています。そのバックグランドには、日本経済動向や働く環境の変化、そして人事制度の変遷と多少なりとも関係していると思います(図1 人事制度の変遷)。

60年代生まれの50代後半~60代の方々は、高度経済成長期に働いていた世代。企業のほとんどが新卒採用し、終身雇用制度で定年まで同じ会社で働き続けることが良いとされていました。一方、90年代以降に生まれた20~30代は、IT・インターネットが普及した環境下で幼少期を過ごし、学生の頃から起業できる世代。また、副業や兼業を推進されるなど、一つの組織の中で働き続けることにとらわれず、多様な働き方でキャリアを自由に考えています。

その狭間にいる70~80年代生まれの40~50代前半は、バブル経済崩壊後、就職氷河期に社会人をスタート。年功序列や終身雇用で働く社員の背中も見てきたが、他方、自由にキャリアを考えていける若者世代が追い上げてくる板挟み状態。残った会社人生を同じ会社でやり遂げるか、新たなフィールドへチャレンジするか、悩んでいる人たちが多いと感じています。
これから、コーポレート・ガバナンスコード強化による経営陣の外部人材登用、ジョブ型とメンバーシップ型のハイブリッド雇用への移行など、人材の流動化はさらに進むことが予測されます。そのため、一つの会社にキャリアをゆだねることなく、セルフキャリアを作り上げていく必要性が増していくことでしょう。

皆さんに提案したいことは、キャリアについて一人で悩むのではなく、社内外の人たちに話を聞いてもらうことです。米国では、キャリア相談できるカウンセラーを持っているビジネスマンが多いようですし、日本でも外資系企業に勤める人たちは定期的にコーチングを受け、自身の市場価値を確認しながらキャリアについて意識的に考える機会を持つ方々がいます。

日本の大手製造業にご紹介した女性部長の例をご紹介しましょう。
この方は、50代を迎える中、部長からなかなか昇格できず、旧態依然の組織で働くことに悩まれていました。転職が初めてだったこともあり、時間をかけて彼女の求めるキャリアとクライアントの求める人材像の確認を行いました。特に上位ポジションで転職する場合、直属の上司となる方など周囲の理解が得られるかが大切です。時間をかけてクライアントと確認し、進めた結果、着任当初から着実に成果を上げ、つい先日「役員に昇格した」と喜びのメッセージが届きました。

優秀な女性は、経験したことがないチャレンジに対して尻込みするケースがみられます。彼女が私のようなエージェントと出会わなければおそらく今回のような転身はなかったことでしょう。

現状の仕事との比較をしながらキャリアについて考えていくことが日本企業で働く40~50代に浸透していき、セルフキャリアを考え行動していくことで、日本の労働市場はもっと活性化していけるのではないかと考えます。社外の方との対話の結果、今の会社に残る選択肢を取ることもありますが、大事なのは、広い視野で情報を取りながら、人生後半のセルフキャリアについて考えることです。

人生100年時代を豊かに過ごす方法について

“人生100年時代”といわれる中で、キャリアの選択肢も増えてきています。今いる会社のキャリアがゴールだと考える必要はありません。昨今50代の転職市場は活性化し、60代で起業する方も増えています。やりがいを感じているものを伸ばし、社会貢献し続けていくことができる時代です。

私はこれからも、やりたいことを実現していける「活き活きキャリア」を支援したいと思います。
人間の原動力である「ワクワク」する心を大切に、かけがえのない人生を豊かにしていきましょう。
最後に、今年の『マーケティングホライズン』誌では、人材のマーケット市況や、昨今注目されるコーポレート・ガバナンス経営について、情報発信していきたいと思います。

 

徳田 治子

縄文アソシエイツ株式会社 コンサルタント

マーケティングリサーチ会社でマーケティング戦略、事業開発、海外事業進出支援に従事。その後、外資系コンサルティングファームでブランド経営戦略を推進。
現在は、人材コンサルティング会社で、日系の製造業の経営課題を解決のため、経営者と価値ある人材との出会いの創出、次世代後継者選びや育成(エグゼクティブコーチング)なども実施している。ライフワークとしてNPO法人でダイバーシティ推進、女性リーダー育成なども行う。

2023年、私は群馬からはじめます。

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