各受賞プロジェクトのご紹介

公益社団法人 日本マーケティング協会は、2017年度の優れたマーケティング活動を表彰する「日本マーケティング大賞」選考委員会(選考委員長・松本肇 産業経済新聞社 取締役)は第10回日本マーケティング大賞に、推薦プロジェクト総数161件の中から、 『クラフトボス』 ~新しい働き方ニーズを捉えた市場開拓~ (サントリー食品インターナショナル株式会社)を選出、奨励賞5件、地域賞3件を選びました。

 

日本マーケティング大賞
選考基準
総合的に周到なマーケティング計画のもと、市場へのインパクト、独自性、ブランド定着性など、目覚ましい成果を上げたプロジェクトを選考委員会で選定。

『クラフトボス』 ~新しい働き方ニーズを捉えた市場開拓~
サントリー食品インターナショナル株式会社

 

受賞理由

新しい働き方のニーズを捉えて、既存顧客、新規顧客両方からの支持を得た秀逸なマーケティング戦略。ターゲット拡張とブランド強化で、ロングセラーブランドに新しい生命を吹き込むことに成功。

2017年に発売25周年を迎えたサントリーの缶コーヒー「BOSS」は同年、新たに「クラフトボス」を発売。BOSSの従来のブランドコンセプトの「働く人の相棒」を踏襲しながら、「クラフトボス」では缶コーヒーを積極的に飲まないIT系オフィスワーカーに着目、彼らのワーキングスタイルにあった「働きながら飲用」できる商品を提案して、新しい市場を開拓しました。

現代のオフィスワーカーが、時間をかけて少しずつ飲むことに適したペットボトルタイプの容器デザイン、本格コーヒーであることを伝えるための「クラフト」のネーミング、動画を使ったドラマ仕立てのコマーシャルをインターネット上で配信するコミュニケーション戦略など、これまでのブランドイメージを拡張させながら、既存顧客、新規顧客双方にアプローチしたマーケティング戦略は、ロングセラーブランドでも革新的なマーケティングを常におこなう必要性を再認識させるものと評価されました。

結果として缶コーヒーと縁遠かった女性・若年層の開拓に成功し、発売初年度の2017年、1,000万ケース超(2億4千万本超)の販売を記録し大ヒット。また、2018年もこれまでに既に500万ケース超(1億2千万本超)を販売し勢いは更に加速。単年度のみではない成果、需要創造を果たしました。

 

日本マーケティング大賞 奨励賞
選考基準
独自性や先行性、社会課題解決性、新しいマーケティングの芽など、規模は小さいながらもキラリと光るマーケティング・プロジェクトを選考委員会で選定。

『注文をまちがえる料理店』の運営
注文をまちがえる料理店実行委員会

 

受賞理由

画期的な発想で超高齢化社会の課題への理解促進

認知症の人たちへの周囲の理解促進と認知症の人たちの社会参加。その課題に正面から向き合い、ホールスタッフ全員が認知症の方の期間限定イベント型レストランが都内にオープンしました。一風堂、とらや、グリル満天星といった有名店舗・レストランの賛同を得ながら支援者493名、クラウドファンディングによって支援金1,291万円を集めて運営を成功させました。認知症の人々の社会参加という課題を見事にユーモアに変えて解決し、今後の日本のダイバーシティ体験装置のモデルとなるのではないかと期待されています。

 

日本一楽しい漢字ドリル『うんこ漢字ドリル』 
株式会社文響社

 

受賞理由

斬新かつユニークなアイデアが生んだ大ヒット商品

全3,018文例に「うんこ」を用いたユニークな漢字ドリルで、子供たちが笑いながら勉強できると評判になり、漢字ドリルとしては異例の累計330万部の大ヒットを記録しました。ターゲットの「インサイト」に徹底して寄り添い、タブー的な命題にチャレンジした勇気ある取組みは、小学生の遊び心をとらえ、学習時の集中力をも向上させるなど、さまざまな工夫や仕掛けが盛り込まれていて、親の心もつかんでいると言えましょう。低迷が続く出版業界を活性化させた点や、異業種との連携のきっかけを生み出した点なども高い評価を受けました。

 

カプセル玩具の市場創造
株式会社タカラトミーアーツ/TEAM JAPANESE CAPSULE TOY GACHA

 

受賞理由

ニッチ市場を創造したインバウンドマーケティング

2020年に向けてインバウンド市場が拡大する中、出国前に外国人観光客が「あまった小銭」で楽しめるカプセル玩具装置「JAPANESE CAPSULE TOY GACHA」を、全国の主要国際空港に大量設置。平成29年度には3億円規模の市場を創出。海外旅行時の小銭の余りや待ち時間という旅行者の課題を見事に解決、さらに日本のモノづくりへの理解を深め、お土産としても大変好評を得ました。「あまった小銭をオモチャに!」という外国人観光客向けのキャッチコピーとガチャを魅せる空間演出を行い、広告費をかけずにクチコミやSNSで波及したことでメディアにも多数取り上げられ、国内外問わず大きな反響を得ました。

 

高齢ドライバーの運転見守りサービス「Ever Drive」
オリックス自動車株式会社

 

受賞理由

ビッグデータを活かした社会課題解決マーケティング

ドライバーの運転状況をIoT技術で可視化し運転リスクの低減を目指す法人企業向けサービス「e-テレマ」のノウハウを生かして、高齢ドライバーの運転状態を家族間でリアルタイムに共有するサービスを始めました。高齢ドライバーの運転を家族が遠方でも見守れるという利点に加え、保険など別の事業への拡大、家族間のコミュニケーションの活性化にもつながり、今後の展開が期待されています。このサービスにより急減速回数が利用開始前に比して低減するなど、事故リスクの軽減成果が出てきています。

 

「Kobe INK物語」による市場創造
株式会社ナガサワ文具センター

 

受賞理由

低迷市場における新たな価値創造

神戸に本社を置くナガサワ文具センターが2007年から発売を開始した万年筆用インク商品「Kobe INK物語」は、神戸の「地域の色」をインク色として表現し、低迷していた万年筆インク市場で、単一ブランドで年間3万個の生産量を記録しました。万年筆市場の拡大ではなく、インクの市場の拡大を万年筆の市場の拡大につなげる逆転の発想をとり、「地域の色」と言う新しい価値が、新たな顧客と新たな用途を生み出すことよって支えられた事例です。発売から10年で開発されたインクは、限定色を含め80色以上、日本国内だけでなく米国、豪州、台湾へと出荷が行われています。

 

日本マーケティング大賞 地域賞
選考基準
優れたマーケティング・プロジェクトであることに加えて、経営資源が地域にあること、地域活性化に資すること、地域の特徴を活かした事業であることが条件。日本マーケティング協会の関西、九州、北海道支部でそれぞれ選考し、実行委員会・選考委員会が承認する。

民間の力で大阪城を 一層世界的観光地に
大阪城パークマネジメント共同事業体(大阪市)/関西地区
 

 

受賞理由

大阪観光のシンボルである大阪城公園を、日本初の民間主体の事業者として独立採算で適正に管理しつつ、さらに様々な開発やイベントを仕掛けて戦略的に運営しています。飲食・物販を中心とした利便施設「ジョー・テラス・オオサカ」、旧第四師団司令部庁舎を耐震改修の上活用した「ミライザ大阪城」をオープンさせ利便性向上や夜の公園集客にも取り組んでいる他、数多くのイベントを展開。大阪城天守閣の入場者は2014年度200万人以下でしたが、本事業のスタート時から3年連続入館者記録を更新し、2017年度は270万人を突破しました。さらに公園全体では1000万人以上の集客を見込んでいます。

 

『湯~園地』計画
別府市(大分県)/九州地区

 

受賞理由

別府市は、「湯~園地」計画と銘打ったYouTube動画を制作し、話題性と幅広い認知を獲得しました。「税金を一切使わない」という理念の下、実行委員会形式をとり、資金調達の手段として、クラウドファンディングで一般の人からの資金援助も得ながら、ふるさと納税やインターネットからの支援申込による資金援助も加えて、総額約9,000万円の支援を獲得することに成功しました。平成29年7月に、動画の撮影場所にもなりました「別府ラクテンチ」にて、3日間限定で「湯~園地」を開催し、経済波及効果は1億8,547万円、約14,000人の来場者となりました。斬新なPR手法により、新サービスのローンチ方法に新たな視点を与えたことも評価されました。

 

企画・実行するマチ『東川町』。写真の町としてのブランディングとその成功
東川町(北海道上川郡)/北海道地区

 

受賞理由

かつて地域活性化のムーブメントとなった「一村一品運動」の中、東川町は「写真」を提案し、85年に「写真の町」を宣言しました。「写真写りの良い町づくり」を目指し、現在も人が集まる町として進化しています。多くの地域が少子化や人口移動に悩む中、東川町では定住者が過去20年で約14%増加。北海道で初めて景観行政団体に指定されているなど、「大自然と共生する町」として評価が上昇しています。2017年には東川町を舞台とした映画「写真甲子園 0.5秒の夏」が全国ロードショー公開され、こちらも話題となりました。

 

第10回日本マーケティング大賞 概要
『日本マーケティング大賞』は、厳しい経済環境の中でも、企業・自治体・団体等の組織における新しいマーケティングやコミュニケーションの手法、もしくはビジネスモデルの開発を積極的に促すことで、消費者の生活の向上と経済・社会の活性化に資する活動を奨励し、マーケティングのプレステージを高めることを目的として2007年に発表、第1回は2009年より実施されました。10回目となる本年は、日本の市場が成熟化する中で、成長につながる創意工夫が凝らされたプロジェクトが多くエントリー、厳選な審査の中から上記が選出されました。

 

 

 

対象活動

社会に新しく需要を喚起、あるいは市場を再活性した優れたマーケティング活動

<対象活動の具体例>

a 新たにマーケティングの概念を取り入れた企業やNPO、自治体等の活動
b 新しい価値の提案やトレンドを生み出した活動
c 生活者・社会との共存・共生/社会的課題の解決に貢献した活動
d 社内外、産・官・学とのコラボレーションを取り入れた活動、または生活者との共創
e BtoBビジネスや専門市場におけるマーケティングとして際立った活動
f グローバル市場で成果のあった活動
g マーケティングによりブレイクスルーをもたらした活動
h オリジナルな新しいビジネスモデルの構築
i 規模が小さくても、キラリと光る活動
j 地域特性を活かしたマーケティング活動
k 上記以外でも、今年を象徴するに値する新鮮な戦略提案(マーケティング提案)
対象範囲 日本市場における企業・団体・組織の活動、および日本法人の海外市場での活動
(自治体、NPO、大学・病院なども含む)
推薦資格 日本マーケティング協会会員および日本マーケティング学会会員(自薦・他薦を含む)
審査方法 選考委員により、推薦資料を基に追加情報を含めて討議を実施し、選定
審査結果 2018年6月4日(月) 「日本マーケティング大賞 表彰式」にて各賞贈呈
(表彰式会場: アルカディア市ヶ谷 東京都千代田区九段北4-2-25)
選考委員 「日本マーケティング大賞」選考委員会(産業界・学界から17委員)
選考委員長: 松本 肇 産業経済新聞社 取締役 営業・事業担当
主  催 公益社団法人 日本マーケティング協会
協  力 日本マーケティング学会
後  援 経済産業省

 

 

 

2017.10月現在
(敬称略)

 

実行委員長 後藤 卓也 JMA会長(花王㈱ 前会長)
実行副委員長 嶋口 充輝 JMA理事長(慶應義塾大学 名誉教授)
委 員 俣木 盾夫 JMA副会長(㈱)電通 相談役)
石原 進 JMA副会長(九州旅客鉄道㈱相談役)
村田 正敏 JMA副会長(北海道新聞社 代表取締役会長) 
服部 一史 JMA副会長(㈱電通 顧問)
石橋 正明 JMA専務理事

 

選考委員長 松本 肇 産業経済新聞社 取締役営業・事業担当(新任)
選考副委員長 加治 慶光 アクセンチュア㈱ チーフ・マーケティング・イノベーター

委 員

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恩藏  直人 早稲田大学 商学学術院 教授
古川 一郎 一橋大学大学院 商学研究科 教授
廣田 章光 近畿大学 経営学部 商学科 教授(新任)
八幡 慎一郎 朝日新聞社 メディアビジネス局長補佐(新任)
近藤 精一 NTTコミュニケーションズ㈱ 第五営業本部営業推進部門長兼企画部門長
清澤 優 産業経済新聞社 営業局 局次長
吉雄 敬子 サントリービール株式会社 ブランド戦略部部長
小城 郁夫 凸版印刷㈱ 情報コミュニケーション事業本部トッパンアイデアセンターー
マーケティング本部 本部長 JMA理事
広瀬 哲治 ㈱電通 執行役員 JMA理事
森島 幸彦 日産自動車㈱ 日本マーケティング本部 副本部長 JMA理事
加治佐 康代 ㈱ビデオリサーチ ソリューション局長(新任)
嶋本 達嗣 ㈱博報堂 執行役員 JMA理事(新任)
木下 史朗 ㈱三越伊勢丹ホールディングス 情報戦略本部
グループマーケティング戦略部長(新任)
原 正浩 三菱食品㈱ 執行役員 マーケティング本部長(新任)

運営事務局 服部 峰郎 日本マーケティング協会 事務局長
白根 有一 日本マーケティング協会 研究開発局 エグゼクティブコンサルタント
河西 章宏 日本マーケティング協会 関西支部 事務局長
水戸 信之 日本マーケティング協会 関西支部 エグゼクティブマネージャー
竹原 聖人 日本マーケティング協会 研究開発局 シニアコンサルタント
大坪 満 日本マーケティング協会 九州支部 事務局長
大橋 利彦 日本マーケティング協会 北海道支部 事務局長
松本 成博 日本マーケティング協会 研究開発局 コンサルタント
横山 麻衣 日本マーケティング協会 総務部 アシスタントマネージャー

 

 

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