福岡のスタートアップコミュニティStartupGo!Go!の活動について

活動の概要~九州最大のStartupイベント~
福岡市は2012年に「スタートアップ都市宣言」を行い、2014年5月には国家戦略特区として福岡市グローバル創業・雇用創出特区」に指定された。

同時期に地元福岡でベンチャー支援活動を行っていた岸原稔泰と石元玲が東京のスタートアップイベントに参加、自分たちでも一からこのようなスタートアップイベントをやってみようという話となり、ベンチャー支援者、起業家などの有志が集まり、2014年10月に第1回のStartupGo!Go!(参加人数200人、ピッチStartup25社)を開催した。

 

大きな組織のバックグランドをもっていないにも関わらず、日本政策金融公庫が共催として全面的に支援いただき、福岡県Ruby・コンテンツビジネス振興会議が後援となったことで、東京のIT業界で活躍する本荘修二氏や勝屋久氏、嶋根秀幸氏などの福岡県プロデューサーも参加して東京のコミュニティとも繋がるイベントとなった。さらに福岡市から補助を得ることができたことで地域を代表するスタートアップイベントが生まれることとなった。


第2回からは情報通信研究機構の「起業家万博・甲子園」の九州予選も兼ねることとなった。我々のイベントで初めてピッチをしたドレミングが九州代表として選出され、総務大臣賞を受賞し、その後のピッチコンテストで賞を多く獲得するなど、九州から全国区に羽ばたく場ともなっている。


第4回は2017年10月4日に開催した。ピッチコンテストでは43件の応募から31社のStartupが本選に出場しVCなどの審査員の前で展示ピッチを行った。元コロプラ副社長でエンジェル投資家の千葉功太郎氏の基調講演を始めとしたセッションを実施。九州電力や日本IBM、西日本鉄道などの大手企業がスポンサーとなっており、ピッチコンテストの企業賞などを提供した。

 

今年からは一般社団法人九州経済連合会が新たに共催となっており大企業からの参加者も増え470名が参加した。


西日本鉄道(以下「西鉄」)との協業
第1回のイベントに参加していた西鉄のビル事業部の方が、天神の中心部にある西鉄のビル1棟を使ってシェアオフィスを運営しており、我々と連携して何か一緒にできないかとの提案を頂いた。それに対して我々のメンバーの一人がコワーキングスペースの開設を企画しており、コワーキングスペースを作ってほしいと提案したところ、西鉄より快諾をいただき、ビルの2階を改装して共同でコワーキングスペースを開設して運営することとなった。

 

提案したのが2015年1月、オープンが同年6月という驚くべきスピードでコワーキングスペース「天神COLOR」が誕生することとなった。また、ちょうどその時期に経済産業省の委託事業である「先端課題に対応したベンチャー事業化支援等事業(ITベンチャーのスタートアップ促進事業)」「②先輩起業家等によるスタートアップ支援モデル実証事業」に採択され、先輩起業家や専門家がメンタリングを行う「StartupGo!Go!アクセラレーションプログラム」、西鉄とStartupが協業を行う「西鉄オープンイノベーションコンテスト」を実施することができた。


「西鉄オープンイノベーションコンテスト」では、当時東京の大企業において同種のプログラムが多く行われていたにもかかわらず、九州地域においてはまだ1件もそのようなプログラムがなかったため、コワーキングスペースを通じて関係が出来ていた西鉄に提案して実現することとなった。56社の応募の中から11社のファイナリストを選出して、最終審査会を開催した。

 

その後の各事業部との協業の協議にもStatupGo!Go!のメンバーも同席し、結果的に3件の協業実績を残すことが出来た。翌年2017年にもより協業目的を明確にしたうえで「西鉄オープンイノベーションプログラム(西鉄Co+Lab)」を開催し、49件の応募から3件の協業が現在進んでいる。


これらの活動は、Startupにリーチしている民間コミュニティである「StartupGo!Go!」(地元の税理士寺井博志などの支援者や起業家が中心メンバー)。地元の大企業で鉄道・バスだけでなく、商業開発、不動産事業など幅広い事業分野を持つ「西鉄」。

 

創業時の資金を供給する「日本政策金融公庫」(StartupGo!Go!のディレクターとして中心的な役割を果たしている中原健が所属)が連携して行っており、結果的に地域におけるStartupエコシステムを生み出す初期段階での最適な組み合わせとなった。


西鉄Co+Labを契機として、九州電力子会社であるニシム電子工業、凸版印刷九州事業部がオープンイノベーションプログラムを実施するなど、九州の大企業へオープンイノベーションプログラムの実施が拡がっている。


アクセラレーションプログラムの実施
コワーキングスペース「天神COLOR」を拠点として、2015年7月からは「StartupGo!Go!アクセラレーションプログラム」を開始した。

 

福岡市は、国家戦略特区に指定されたものの、Startupが成長するために必要なエコシステムが構築されているとは言えないという問題意識からの実施であった。半年程度の間に事業計画のブラッシュアップなどを行うプログラムであるが、メンターとして東京の第一線の起業家、ベンチャーやピタリストを招聘することを心掛けた。

 

地方の問題として、第一線の人材は東京に偏在しており、せっかく地方で起業してもそれらの知見やネットワークを求めて東京に行かざるを得ないという状況がある。ならば東京の第一線の方にこちらに来てもらえばいいのではないかという発想で招聘することとした。また地方の人間は東京にいって面談するというだけで気後れしてしまうことがあるが、地方において少人数の場で話をしてもらうと身近に感じて、自分でもできるのではないかと自信を持つという効果も狙った。


グローバル展開
2016年11月には九州経済連合会の支援により、アジアエコシステムの構築を目的として東京、大阪、福岡、上海、台湾のインキュベーターがMOUを締結した。2017年5月にはStartupGo!Go! in 台北を開催、11月には上海でもイベントを開催する予定である。

 

2016年10月に開催したStartupGo!Go!では台湾のgolfaceがピッチコンテストで優勝、その後子会社を福岡に設立、西鉄Co+Labでも採択され協業を開始しており、我々が全面的に日本展開を支援している。2017年10月に実施した第4回StartupGo!Go!においては、台湾から8社、上海から2社のStartupが展示・ピッチするなど国際的なイベントとなっている。

 

福岡におけるエコシステム成立間近か?
我々がStartupGo!Go!を始めた3年前には目ぼしいStartupは少なかったが、1億円以上のVCからの資金調達を行うStartupが10社以上現れるなど、実際に注目されるStartupが多く輩出される状況となっている。それに続くStartupも毎月コンスタントに増えている状況であり、福岡市が旧大名小学校を活用したインキュベーション施設Fukuoka growth nextを開設、民間のコワーキングスペースやアクセラレーションプログラムも増加するなど、プレーヤーも、支援施設・プログラムも層が厚いものとなってきている。

 

あとは誰もが納得するロールモデルの登場を待つだけではないだろうか?福岡のいいところは大きすぎず小さすぎないコミュニティがあり、地域のためならと協力し合って成功事例を作っていこうとするところではないかと思う。その中において民間主体の自立したコミュニティとしてStartupGo!Go!はさらに大きな役割を果たしていきたいと考えている。



一般社団法人StartupGoGoについて
福岡市を拠点にスタートアップ支援に取り組む。過去4回のピッチイベント「StartupGo!Go!」の開催のほか、コワーキングスペース天神COLORの運営、オープンイノベーションプログラムやアクセラレーションプログラムの運営、スタートアップに対する資金調達及びビジネス全般のサポートを行なっている。 http://startup-gogo.com/

 

 

岸原  稔泰  (きしはら  としひろ)
一般社団法人Startup GoGo  代表理事
昭和48年6月生。福岡県北九州市出身 平成8年4月国際流通グループに入社、経営企画部門に配属、平成11年8月㈱グロースアシスト(旧社名㈱
ディー・ブレイン九州)入社。九州地域においてグリーンシート及び証券取引所上場のためのコンサルティング業務に従事。平成17年4月よりIPO専業証券会社に出向。経営企画室長、公開引受部門の責任者を務める。平成21年7月よりMBOを実施して当社代表取締役就任(現任)、平成28年1月一般社団法人Startup GoGo設立。

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