なぜ Instagramは若者に受けるのか:Instagramの利用実態を調べてみた

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2020年8月号『DX : 先行する生活者、日本企業は追いつけるのか』に記載された内容です。)

ネット世代、その中でも SNS 世代の中にいる私たちは、LINE、Instagram、 Twitter、facebookなど様々な SNS を自分も周りの人も使っているのが当たり前である。その中でもInstagramは、ここ3年ほど、つまり私たちが大学に入学した頃から急速に浸透しだしたという感覚がある。国内の利用者数を見てみると2016年4月時点で1000万人であったが、2019年3月時点では3倍以上の3300万人を記録している。

これは、LINEやTwitterに次いで、3番目に多い数字となっている。(出典:https://www.uniad.co.jp/260204)2017年のユーキャン新語・流行語大賞では「インスタ映え」が年間大賞に選ばれており、ここ3年ほどで私たちの周りの友人、知人だけでなく、日本全体でInstagramが流行しているのは事実だと捉えられる。

またここ最近、頻繁に目にしたり耳にするようになったものとして、例えば、レストランでの豪華なバースデープレート、ドライブ先としてのネモフィラ畑、韓国式アメリカンドッグと言われるチーズドッグ、再ブームが来ているフィルムカメラやチェキなどが挙げられるが、これらはどれもInstagramの投稿でよく目にするものであり、Instagramの流行と相まって流行したものであろう。Instagramで人気が沸騰し、「インスタ売れ」した商品も多くある。このように、近年私たちの消費行動は変わってきたのではないだろうか。

Instagramはこれまで、写真や動画を共有するアプリとして徐々に浸透してきた。一方で、最近では投稿をしたり投稿を見たりするだけでなく、友達とご飯に行く時のお店探しに使ったり、コスメを買う時に参考にしたり、「検索をするため」にインスタを使うことが増えているように感じる。そこで、検索ツールとしてのInstagramの存在感について今回調査をした。

 


Instagramをどう使っているか聞いてみた



私たちはユーザー目線での現状分析を行うため、LINEとInstagram、Twitterを通して同年代の知り合いを中心にアンケート調査を行ったところ、134名(うち男性58名、女性76名)の回答が集まった。うち大学生が127名、社会人が7名となっている。Instagramの利用率に関しては、私たちがLINE、Twitter、Instagramを使ってアンケートの回答をお願いし、SNSを使用している人を対象に調査していたため、偏っているきらいがあるが、9割の人がInstagramを使っているという結果が得られた。

Instagramをどのように使っているか、特に思い出を記録する場所としてではなく、「情報を知る場所」としてInstagramをどのように使っているかを質問し、他の検索ツールと比べてInstagramをお店などの検索に使っている理由も自由回答で記述してもらった。

以下が私たちが実施したアンケート調査の結果詳細である。私たちが興味深いと感じた結果を中心に論じていく。まず、「Instagramで使う機能、場面について教えてください。」という質問では、134人中74人(55.2%)が遊びに行く場所やお店、買う洋服やコスメなどを決める検索のためにInstagramを使用していることがわかった。そして中にはInstagramの主要な機能である「フォローしている人の投稿/ストーリーを見る」「投稿/ストーリーをあげる」ためよりも、「検索」のためにInstagramを利用する頻度の方が高いと回答している利用者もいる。

検索ツールとしてのInstagramの存在感については、2019年8月にSHIBUYA109エンタテイメントとジギョナリーカンパニーによって①「SHIBUYA109」に来館した15~24歳の女性②渋谷・原宿・吉祥寺エリアで行動する15~24歳の女性 計450名に「遊びに行く場所を検索する際に使用する検索ツール」について調査をしたデータからも考察できる。検索エンジン(Google/Yahoo!など)や「Twitter」を大きく上回り、「Instagram」が82.9%で1位となっている。(引用:https://webtan.impress.co.jp/n/2019/10/18/34268

Instagramで検索or情報収集をしたことがあるジャンルに関しては、下のグラフのように多岐にわたり、レストランや観光スポット、食べ物が特に多いことがわかった。(下図)

 

また、Instagramの投稿を見て、実際にそのお店に行ったり商品を買った経験がある人は134人中93人で、約7割に及んでいる。検索するだけでなく実際の消費行動に繋がっていることがここから明らかになった。このようにInstagram経由の消費行動をしたことがある人の中では、(下図)のグラフのようにレストランやカフェなどの飲食店に実際に足を運んだ人が最も多い。

 

 


Instagramは信頼のおける検索ツール



ここで、利用者が検索ツールとしてInstagramを使う理由や、Instagramが他の検索ツールと比べて優れている点について、自由記述で集まった回答(39件)をもとに詳しく見ていきたい。

まず、自由回答の記述に一番多く見られた言葉として「写真」が挙げられる。具体的には、「食べログとか口コミサイトよりも写真が多いから雰囲気が伝わりやすい」、「文字よりも写真でパッと目に入ってきた方がイメージがつくのでわかりやすく、選びやすい」、「写真メインでおしゃれで情報量が多い」などの回答が得られ、写真の投稿がメインであるInstagramの特性に利用者が魅力を感じ、検索ツールとして活用していることが伺える。また、画像がメインである点に魅力を感じるというのは比較的男性からの意見も多かった。

それ以外にも、他の検索ツールと比べて、情報が「最新」「信頼できる」「リアルである」などの声が多く挙がっていた。こちらも具体的にいくつか紹介する。

・素人の方が撮っている写真を見ると大体の料理の質やお店の雰囲気が想定できるので、ぐるなびなどの写真よりも信頼できる。(女性)
・他のサイトよりも、情報が新しい点が優れていると思っている。というのも、若者が行く店は移り変わりが激しかったり、コロナにより開業の状況が食べログなどでは見えにくい。インスタグラムではその点、一週間前に実際にそのお店に行った人の投稿などが見えるので、安心して店まで行くことができる。(男性)
・InstagramはWebブラウザでの検索より直感的にチェックでき、外れも少ない感覚。Instagramを利用している層に同じ年代や趣向を持った人が多く(Webブラウザ比較)、情報の質も相対的に高そう。(女性)
・飲食店に限って言えば、映えとかにこだわってちゃんと調べたであろう人(しかも同世代の女性が多め)の投稿が出てくるので、ぐるなびなどの誰が書いたかわからない口コミより参考になる。(女性)
・広告ではなく実際に行った人の感想や情報が手に入る、実際にそこに行った人の生の声が伝わってくる。(女性)



実際、私たちもInstagramの検索機能を日常的に利用しているのだが、自由記述で頂いた意見はどれも共感できるものであった。Instagramは写真がメインでわかりやすいだけでなく、誰でも投稿ができることから情報が随時更新され、リアルかつ最新の情報を得られるということ、そしてどのような人が発信している情報なのかを把握しやすいため信頼できるということから、利用者に安心感を与えているのかもしれない。

 


利用者が得たい情報とは



また、商品などのレビューを投稿している一般の人のアカウントで、よくチェックしているアカウントについても調査したところ、「りょうくんグルメ」「むにグルメ」などが多くあげられており、グルメ関連は特にInstagramが消費行動のきっかけになっていると考えられる。りょうくんグルメとむにグルメはどちらもグルメの写真を、食べたものの感想やお店の詳細な情報と共に紹介している個人のレビューアカウントである。

一方で、お店やブランドの公式アカウントをフォローしている人も134人中65人と約半分に見られ、CHANELやDiorなどのハイブランドから、無印良品、SUNTORYなど日々触れるブランドまで、それぞれ「自分のお気に入りのブランド」をフォローしているという印象を受ける。レストランなどは、「お客さん目線での情報を知りたい」「ありのままのレビューを見たい」という人が多いが、ファッションブランドに関しては好きなブランドが発信している情報を見たいという人が多いのかもしれないと考えた。

最後に、自分がInstagramに何かのレビューを投稿したり、ハッシュタグでお店や商品の紹介をしたことはあるかを聞いたところ、約4割の人がそのような投稿をしたことがあるとわかり、興味深い結果だと感じた。私たちが調査対象とした大学生や社会人も、Instagramで自分が行った場所や買ったものについて情報発信をしており、現状Instagramがそのような発信を気軽にできる場になっているということがわかった。(下図)

 

Instagramに何かのレビューを投稿したり、ハッシュタグでお店や商品の紹介をしたことはあるか教えてください。ある方は具体的な項目にチェックを、ない方は「ない」にチェックを入れてください。

 


私たちの生活とInstagram



以上の調査結果からわかるように、Instagramは、写真や動画を共有するためだけでなく、ごはんを食べるためや買い物をするため、旅行に行くためにも利用されており、特に若者世代にとって身近で、生活に欠かせない存在となっている。

現代の若者はこれまでの世代以上に、幼い頃からテレビやYouTubeなどの動画アプリに触れるなど、画像や動画に対する親和性が高い。加えて、ネットを利用するのが当たり前の世代でもあり、情報が溢れている中で、いかにリアルタイムで信頼できる情報を収集するかを模索している。

そのような中でInstagramは、「写真」という可視化された情報が得られる、たった数時間前に更新された情報を入手することができる、投稿したのがどの性別、年齢層のどんな趣味趣向を持った人なのかがわかる、という他のアプリにはない機能を生かして若者のニーズを上手く捉えているといえるかもしれない。

今後も、人々の写真やネットに対する親和性はさらに高まっていくと考えられ、生活の中でのInstagramの存在感もその分これまで以上に大きくなっていくだろう。

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